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大阪市平野区喜連|築25年アパートの外壁・屋根塗装|入居者対応と工事中の段取り全記録

BEFORE 施工前
外壁塗装前の大阪市平野区喜連の2階建てアパート外観
AFTER 施工後
塗装が完了した大阪市平野区喜連の2階建てアパート外観

「入居者さんに迷惑がかからないか、それだけが心配で」

大阪市平野区喜連にある築25年・2階建てアパートのオーナー様から最初にいただいた言葉です。外壁の色があせていることも、屋根に苔が広がっていることも、ご自身で分かっておられました。それでも真っ先に口をついて出たのは、建物の劣化ではなく、そこで暮らしている方への心配でした。

アパートの外壁塗装が戸建てと決定的に違うのは、この一点に尽きます。建物を持っている人と、毎日その建物を使っている人が別だということ。塗る技術そのものは同じでも、工事を「誰にどう伝え、どう進めるか」という運営の設計が、仕上がりと同じくらい重要になります。

この記事は、その現場運営の記録です。いつ・どんな方法で入居者の方に告知したか。洗濯物やベランダはどう扱ったか。高圧洗浄の日に何に気を配ったか。共用階段が使えない時間をどう縮めたか。そして、それでもご不便をおかけしてしまう部分は何だったのか。実際に行ったことを、順を追って書きます。

📍 平野区の費用相場・業者選び・施工実績のまとめは「平野区の外壁塗装|完全ガイド」をご覧ください。

工事の基本情報

所在地 大阪市平野区喜連
建物 2階建てアパート(築25年・入居者様が居住した状態での施工)
施工内容 外壁塗装/屋根塗装/シーリング打ち替え/軒天・付帯部塗装/共用階段の長尺シート施工/玄関ドア塗装/蔦・植え込みの剪定撤去
使用材料 外壁:KFシェアルドSi(KFケミカル)/屋根:シャネツテックⅡSi-JY/シーリング:オートンイクシード(オート化学工業)/鉄部錆止め:ハイポンファインプライマーII/付帯部:ファインパーフェクトトップ(日本ペイント)
工期 約4週間
保証 外壁5年・屋根5年
参考価格 248万円前後(税込)

※参考価格は、同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安です。建物の規模・階数・足場の掛けやすさ・傷みの程度によって金額は変わります。実際の工事金額は現地調査のうえでお出しします。

なぜアパートの塗装は、戸建てと段取りが変わるのか?

アパート塗装で入居者告知、洗濯物制限、共用通路、室外機や自転車、視線対策が必要な理由の図解
住みながらの工事だから、工程より先に生活動線を決めます

戸建ての塗装では、伝える相手はお施主様ご本人と、ご近所の数軒です。ところがアパートでは、契約するのはオーナー様なのに、実際に足場の音を聞き、洗濯物を取り込み、通路を迂回するのは入居者の方です。費用を払う人と、不便を引き受ける人が違う。ここが根本的な違いです。

だから工事の良し悪しは、塗膜の厚みだけでは決まりません。入居者の方から見て「聞いていたとおりに進んでいる」と感じられるかどうかが、そのままオーナー様への評価になります。塗装がきれいに仕上がっても、工事期間中の対応が雑だったせいで更新のタイミングで退去が出てしまえば、オーナー様にとっては損失です。

空室の有無で、段取りはどう変わる?

最初に確認するのは、いま何戸が埋まっていて、何戸が空いているかです。

空室が多い建物ほど、段取りの自由度は高くなります。足場の掛け方も塗る順番も効率を優先して組めますし、洗浄の日程も職人の動きやすさで決められます。空室のバルコニーは資材の一時置きにも使えます。

反対に満室に近い建物では、判断の基準が変わります。在宅の方が多い面を先に済ませて拘束期間を短くする、高圧洗浄の日を面ごとに分けて「全戸が同時に窓を開けられない日」をつくらない、といった配慮が必要になります。その分だけ工程には余裕を持たせることになり、工期は伸びる方向に働きます。

この建物は入居者の方が生活されている状態での施工でした。外壁・屋根・シーリング・共用部・付帯部までを含めて、工期は約4週間で組んでいます。同じ規模でも空室が多ければもう少し詰められますが、無理に詰めた工程は、雨が一日降っただけで入居者の方への約束が崩れます。アパートの工程は、余白を持たせるほうが結果的に信頼を守れます。

入居者への告知はいつ、どうやって行った?

アパート塗装の入居者告知を2週間前、前日、当日、完了後で示したタイムライン図
オーナー任せにせず、施工店が直接伝えるとトラブルを減らせます

この工事でいちばん時間をかけたのが、ここです。

いつ配る?──「2週間前」と「前日」の二段構え

まず足場が建つ約2週間前に、工事のお知らせを全戸のポストへ投函しました。ご在宅だった方には、その場で直接ご挨拶もしています。

ただ、2週間前の紙は覚えていてもらえません。当たり前のことですが、入居者の方にとって塗装工事は自分の予定ではないからです。そこで足場を設置する日の前日と、高圧洗浄をする日の前日に、日付だけを書いた短い紙をもう一度投函しました。A4一枚に「明日◯月◯日、足場を組みます。8時〜17時、大きな音が出ます」とだけ書いたものです。長い説明よりも、この一枚のほうが効きます。

何を書く?──「注意してください」ではなく日付で書く

最初の書面に入れたのは、次の項目です。

  • 工事の全体期間(着工日と、天候により前後する旨)
  • 作業時間帯(原則8時〜17時)
  • 足場の設置日と解体日
  • 高圧洗浄の日(この日は窓を閉め、洗濯物を外に干せません)
  • 各面を塗る時期の目安(そのお部屋の窓が開けにくくなる日)
  • エアコン室外機の養生について(原則、運転できる形で養生します)
  • 自転車・バイク・植木鉢などの一時移動のお願いと、移動先
  • 工事中の連絡先(オーナー様ではなく、施工店の番号)

ポイントは、「工事中はご注意ください」という書き方をしないことです。入居者の方が知りたいのは注意喚起ではなく、自分の生活のどの日に、何ができなくなるのかだけです。日付で書けば、その日だけ予定を調整していただけます。曖昧に書くと、4週間ずっと気を張らせることになります。

誰が配る?──オーナー様ではなく施工店が回った理由

告知と挨拶まわりは、すべて当社で担当しました。オーナー様にお伝えしたとき、「それは助かります」とおっしゃっていただいたのを覚えています。

これは手間を代わりに引き受けたかった、という以上の理由があります。入居者の方からの質問は、ほとんどが工事の中身についてです。「いつまで足場があるのか」「臭いはどのくらい続くのか」「ベランダの荷物は動かしていいのか」。オーナー様が窓口になると、聞いて、現場に確認して、折り返す、という往復が発生します。その一往復のあいだに、入居者の方の不安は膨らみます。最初から施工店に窓口を一本化しておけば、その場で答えられます。

洗濯物はどうする?ベランダはいつまで使える?

入居者の方から実際にいちばん多く出るのが、この質問です。

正直にお答えすると、外に干せない日は必ず出ます。「まったく影響ありません」とは言えません。干せなくなるのは、大きく次の三つのタイミングです。

  1. 高圧洗浄の当日。水しぶきと、洗い落とした汚れが飛びます。この日は全戸で室内干しをお願いしました。
  2. そのお部屋の面を塗っている期間。下塗り・中塗り・上塗りと重ねるあいだ、塗料の飛散とにおいの移りを避けるため室内干しになります。面ごとに数日単位です。
  3. ベランダ内側の壁を塗る日。この建物ではベランダ内側の凹凸面も塗装しています。ベランダに出られない時間帯が発生します。

だからこそ、書面に日付を書き出しました。「工事期間中は洗濯物にご注意ください」と書けば4週間ずっと不便ですが、「この日とこの日は室内干しをお願いします」と書けば、入居者の方が困るのはその日だけで済みます。

ベランダに置かれている荷物についても、塗装する面にかかるものだけ、事前に内側へ寄せていただくようお願いしました。職人が勝手に動かすことはしません。入居者の方の私物に無断で触れないことは、工事の品質とは別の意味で、必ず守るべき線だと考えています。

高圧洗浄の日が、いちばん気を使う

工程のなかで入居者の方への影響が最も大きいのが、高圧洗浄です。

築25年で一度も塗り替えていない建物ですから、外壁には粉状に浮いたチョーキングの粉が全面に乗り、屋根には苔が広く根を張っていました。これを落とさずに塗ると、汚れの上に塗膜を乗せることになり、数年で剥がれます。手を抜けない工程です。

チョーキングと退色が進んだ石目調サイディング外壁
指でなぞると白い粉がつく状態。防水機能はほぼ失われていました
苔と白化が広がったスレート屋根の施工前
塗膜が消えて素地がむき出しになり、苔が広く根を張っていました

一方で、この工程は音と水が同時に出ます。洗浄機のエンジン音は生活音としては大きく、窓を閉めていても聞こえます。飛沫は網戸の隙間からも入ります。エアコンの室外機や換気口の周りを洗うときは、室内に水の音が響くこともあります。

この現場で行ったのは、次の三つです。

  • 洗浄日を前日にもう一度告知し、窓の締め切りと洗濯物の取り込みをお願いした
  • 作業を8時ちょうどではなく、生活音が立ち始める時間帯に合わせて始めた
  • 建物を一度に洗い切らず、面ごとに区切って進め、全戸が同時に窓を閉め切る状態を短くした

それでも、洗浄の日が静かになることはありません。ここは正直にお伝えしたうえで、日程を事前に共有するしか方法がないと考えています。

塗料のにおいは、どのくらい続く?

この工事で使用した塗料は水性系が中心で、かつて主流だった溶剤系の強いシンナー臭とは性質が異なります。とはいえ、においがまったくしないわけではありません。

実際にお伝えしたのは、次の内容です。塗っている当日と、乾燥するその日のうちがいちばん感じやすいこと。窓を開けたままにすると室内に入りやすいので、自分の部屋の面を塗っている日は窓を閉めていただきたいこと。そして、面の塗装が終われば数日で気にならなくなること。

においに敏感な方、小さなお子さんや高齢の方がいらっしゃる場合は、その部屋の面を塗る日を先に伝えておくと、外出の予定を合わせていただけることがあります。「気をつけます」と言うより、日付を渡すほうが親切です。

作業員の視線とプライバシーは、どう扱ったか

足場が建つということは、普段は誰も立たない高さに、他人が立つということです。2階の窓のすぐ外に職人がいる状態が、数週間続きます。これは入居者の方にとって、想像以上に落ち着かないものです。

この現場で徹底したのは、次の点でした。

  • 窓の正面で作業するときは、必要以上に室内側へ視線を向けない
  • 足場の上での私語や大きな声を控える(会話の内容は室内によく届きます)
  • 作業を始める前に、その面の各戸へ「本日この面を塗ります」と分かる形で知らせる
  • 養生シートは、目隠しになる範囲を確保して張る

養生シートは塗料の飛散を防ぐためのものですが、アパートでは視線を遮る役割も同時に果たします。どこまで張るかを決めるとき、飛散防止だけで考えないようにしています。

通路や階段が使えない時間はある?──共用部の段取り

アパート塗装中に階段や共用通路、玄関前を使える状態に残す段取りの図解
入居者が出入りできる道を残して、工程を細かく分けます

共用部は、アパートの工事でいちばん神経を使う場所です。外壁や屋根は「そこを通らない」で済みますが、階段と通路は通れなければ帰宅も出勤もできません。

踏み面が磨耗した共用階段の施工前
共用階段の踏み面。滑り止めの効きが落ちていた状態です

この建物の外部階段は、長年の使用で踏み面の表面が磨耗し、錆と汚れが広がっていました。踏み面が磨り減ると滑り止めの効きが落ち、雨の日の転倒につながります。入居者の方の安全に直結する部分なので、塗装での補修に加えて、踏み面に長尺シート(塩化ビニル製の防滑性・耐久性のある床材)を貼るご提案をしました。

階段を「半分ずつ」使えるようにする

階段の工事で最も避けたいのは、「今日は一日、階段が使えません」という状態をつくることです。そこで作業は段を区切って進め、足を置ける経路が常に残るように組みました。それでも接着や乾燥のあいだ、一部の段に足を乗せられない時間は発生します。その時間帯は張り紙で明示し、朝の出勤時間帯と夕方の帰宅時間帯にはかからないように調整しました。

共用階段の踏み面に長尺シートを貼る作業
共用階段に防滑性のある長尺シートを施工しました
長尺シート端部のシーリング処理が完了した共用階段
端部から水が入らないようシーリングで納めます

シートの端部にはシーリングを充填して納めています。ここから水が入るとシートの下で下地が傷み、数年で端がめくれてきます。共用部は毎日全員が使う場所なので、見た目より先に「めくれない・滑らない」を優先しました。

玄関ドアは、在宅の時間を避けて塗る

玄関ドアは、入居者の方が毎日必ず触れる場所です。外壁と同系色のグレーで塗り替えました。

養生した玄関ドアの塗装作業
玄関ドアは入居者が毎日触れる部分。周囲を養生して塗ります

ドアの塗装は、塗っているあいだ開け閉めができません。短時間ではありますが、その間に外出も帰宅もできない部屋が出ます。そのため、事前に各戸へ日時をお伝えし、ご都合の悪い方には日を替えて対応しました。郵便受けの投入口も養生でふさぐことになるため、この点も合わせてお知らせしています。

共用部の工事は、「作業が何日かかるか」ではなく「入居者の方が何時間困るか」で組む。この順序を逆にすると、必ずどこかで苦情が出ます。

自転車・バイク・室外機・植木鉢はどこへ?

足場を組むには、建物の外周に人が立てる幅が必要です。その線上にあるものは、いったん移動していただくことになります。

この現場でお願いしたのは、駐輪場の自転車とバイク、建物際に置かれていた植木鉢や物入れです。大事なのは、「動かしてください」だけで終わらせないこと。移動先をこちらで決めて示さないと、入居者の方は置き場所に困り、結局そのままになります。この工事では、足場のかからない一角を仮の駐輪スペースとして確保し、その位置を書面と現地の表示で示しました。

エアコンの室外機は、原則として運転できる形で養生します。吹き出し口を完全にふさぐと室内の空調が止まり、季節によっては生活に直結します。また、建物に絡みついていた蔦と植え込みは、足場を組む前に当社で剪定・撤去しました。蔦は塗装の障害になるだけでなく、外壁面に水分を抱え込ませて劣化を早める原因にもなります。

現地調査で見つかった劣化と、実際の工程

アパート塗装の現地調査で見つかった外壁、シーリング、屋根、付帯部の劣化と施工工程の図解
劣化ごとに工程を分けて、生活への影響を抑えて進めます

ここからは工事の中身です。築25年で初めての塗り替えという建物でした。

外壁・屋根・付帯部の状態

石目調の窯業系サイディング外壁は全体に白く退色し、手でなぞると粉が付くチョーキングが起きていました。スレート屋根は苔と白化が広範囲に広がり、棟の中央付近にあるアンテナ支柱の根元からは錆が流れ出していました。鉄部では、シャッターボックスの上面に白化・水垢・錆が出ており、換気扇フードも退色して素地が見え始めていました。

アンテナ支柱の根元から広がったスレート屋根の錆
固定金具から出た錆が雨水で流れ、屋根面に広がっていました
白化と錆が出たシャッターボックスの施工前
上面に水垢と錆。鉄部は塗膜が切れると劣化が一気に進みます

シーリングの打ち替え

サイディングの目地に入っているシーリングは、雨水の侵入を止めている部分です。既存のシーリングをすべて撤去し、目地の両側を養生してからプライマーを塗布し、新しいシーリング材を充填する打ち替え工法で施工しました。使用したのはオートンイクシード(オート化学工業)です。

外壁目地のシーリング打ち替えに向けた養生作業
既存シーリングを撤去し、目地の両側にテープを貼った状態
シーリング目地にプライマーを刷毛で塗布する作業
プライマーは目地とシーリング材を密着させる下地材です
打ち替えが完了した外壁目地のシーリング
目地に均一に充填した状態。硬化を待ってから塗装工程へ進みます

外壁は3回塗り

高圧洗浄のあと、外壁全面をサンドペーパーでケレンし、シーラーで下塗りをしてから、KFシェアルドSi(KFケミカル)で中塗り・上塗りを行いました。退色していたグレーを、より濃いグレーへ塗り替えています。ベランダ内側の凹凸が粗い面は塗料の吸い込みが多くなるため、薄塗りにならないよう塗布量を確保しました。

サイディング外壁のケレン作業
粉化した旧塗膜を削り、塗料が食いつく下地をつくります
サイディング外壁へのシーラー下塗り作業
吸い込みの激しい外壁に下塗り材を入れ、密着を確保します
石目調サイディング外壁の中塗り作業
凹凸の深い面はローラーを丁寧に往復させます
濃いグレーで仕上げる外壁の上塗り作業
上塗り。ここで色と塗膜の厚みが決まります

屋根はタスペーサーを入れてから塗る

屋根塗装の前に、スレートの重なり部分へタスペーサーを差し込みました。塗装で重なりが塞がると、内部に入った雨水の逃げ道がなくなるためです。そのうえで浸透性シーラーで下塗りをして脆くなったスレートを固め直し、シャネツテックⅡSi-JYで中塗り・上塗りを行いました。ブラウン系の仕上がりです。

スレート屋根へのタスペーサー設置作業
屋根材の重なりに差し込み、塗装後も雨水の逃げ道を残します
スレート屋根への浸透性シーラー下塗り作業
脆くなったスレートに下塗り材を染み込ませ、素地を固め直します
遮熱シリコン塗料によるスレート屋根の中塗り作業
左が中塗り済み、右が下塗りのまま。色の差がはっきり出ています
塗り替えが完了したブラウン系のスレート屋根
屋根の上塗り完了。苔と白化で荒れていた面が引き締まりました

軒天と付帯部

軒天は防カビ・防藻性のある塗料で白系に仕上げ、外壁の濃いグレーとの対比をつくりました。シャッターボックスはケレン・錆止め(ハイポンファインプライマーII)・中塗り・上塗りの4工程、換気扇フードもケレンのうえ2回塗りで仕上げています。付帯部では他に、水切りと軒樋も塗り替えました。

軒天の上塗り作業
軒天は白系で仕上げ、外壁の濃いグレーとの対比をつくります
上塗りが完了した黒いシャッターボックス
ケレン・錆止め・中塗り・上塗りの4工程を重ねた仕上がり
上塗りが完了した白い換気扇フード
退色と錆が出ていた換気扇フードも塗り直しました

それでも、ご不便をおかけした部分はあります

ここは正直に書きます。「まったく迷惑をかけません」という工事は、入居者のいる建物には存在しません。

この工事で、実際に入居者の方にご負担いただいたのは次の点です。

  • 高圧洗浄の日、洗濯物を外に干せなかった
  • 自分の部屋の面を塗っている期間、窓を開けにくかった
  • 約4週間、足場と養生シートで日当たりと見通しが悪くなった
  • 足場の設置日と解体日に、まとまった音が出た
  • 自転車の置き場所を一時的に変えていただいた
  • 玄関ドアを塗るあいだ、短時間ドアを開け閉めできなかった

これらはどれも、技術で消せるものではありません。できるのは、いつ・どのくらいの時間そうなるのかを、前もって正確に伝えることだけです。逆に言えば、伝えてさえいれば、ほとんどの方は工事そのものには寛容です。不満になるのは「知らされていなかった」ときです。

オーナー様にとっての判断軸は何か

塗装のタイミングを考えるとき、アパートのオーナー様には戸建てとは別の物差しがあります。

ひとつは、建物が入居希望者の目にどう映るかです。内見に来た方が最初に見るのは間取り図ではなく、実際に建物の前に立ったときの印象です。外壁が全体に色あせ、屋根に苔が広がり、階段の踏み面が擦り減っている建物と、塗り替えたばかりの建物とでは、同じ間取り・同じ家賃でも受ける印象が変わります。

もうひとつは、いま住んでいる方が住み続けたいと思えるかです。アパートの空室は、募集で埋める前に「退去を出さない」ほうが確実です。建物が手入れされていることは、入居者の方にとって「大事にされている物件だ」という感覚につながります。共用階段の踏み面を滑りにくくする、玄関ドアを塗り直す、軒天を白く戻す。こうした部分は募集広告には載りませんが、毎日使う人には確実に伝わります。

三つめは、修繕を一度にまとめるか、分けるかです。この建物では、外壁・屋根・シーリング・軒天・鉄部・共用階段を一度の足場で同時に施工しました。足場は工事のたびに必要になるため、別々の時期に工事を分けると、そのたびに足場代がかかり、そのたびに入居者の方が同じ不便を繰り返すことになります。入居者対応という観点からも、まとめられる工事はまとめたほうがよいというのが、現場から見た実感です。

退去リスクを抑えるための、工事の進め方

最後に、この工事で意識したことを整理します。

  1. 告知は二段構えにする。2週間前に全体を、前日にその日のことを。人は先の予定を覚えていません。
  2. 「注意」ではなく「日付」で伝える。期間全体を心配させるより、困る日を特定するほうが負担は小さくなります。
  3. 連絡窓口を施工店に一本化する。オーナー様を経由すると往復が生まれ、その間に不安が育ちます。
  4. 作業時間帯を守る。一度でも早朝や夜間に音を出すと、それまでの説明がすべて無効になります。
  5. 共用部は「困る時間」で工程を組む。階段と通路は通れなければ生活が止まります。
  6. 入居者の私物には無断で触れない。移動が必要なら、移動先をこちらで用意して依頼します。
  7. 工期に余白を持たせる。雨で一日ずれても約束が崩れない工程にしておきます。

なお、工事の時期そのものについては、賃貸の入退去が集中する時期を外せるなら、外したほうが動きやすくなります。内見や引っ越しの立ち会いと足場の作業が重なると、双方にとって都合が悪くなるためです。ご計画の段階でご相談いただければ、日程の組み方から一緒に考えます。

喜連という場所について

今回の建物がある喜連は、Osaka Metro谷町線の喜連瓜破駅を最寄りとする、平野区の西寄りのエリアです。戸建てと小規模な集合住宅が混在した住宅地で、築20年を超えるアパートも少なくありません。

こうした住宅地では、建物と建物のあいだが近いことが多く、足場を組む際に隣地との距離や前面道路の幅を事前に確認しておく必要があります。搬入の経路や資材の置き場所は、現地を見てからでないと決められません。当社は平野区での施工実績を重ねてきましたので、このあたりの段取りは現地調査の段階でお伝えできます。

塗装後の共用通路側から見たアパート外観
共用通路側から見た完了後の様子。軒天の白と外壁の濃いグレーで輪郭が締まりました

施工を終えて

足場が解体された日、オーナー様は建物の前で一度立ち止まり、見上げてから「おー、綺麗になりましたね」とだけおっしゃいました。長い感想ではありませんでしたが、その一言で十分でした。

後日、「住人の方の反応も良かったみたいです」とご連絡をいただきました。最初にいただいた「入居者さんに迷惑がかからないか、それだけが心配で」という言葉に、ようやく返事ができた気がしました。

入居者のいる建物を塗るという仕事は、塗膜の性能だけでは評価されません。4週間のあいだ、そこで暮らす方が「思っていたより普通に生活できた」と感じられたかどうか。それが、オーナー様の資産を守ることと同じ意味を持っていると考えています。

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よくある質問|入居者のいるアパートを塗るとき

アパートの外壁塗装で、入居者への告知はいつ・どうやって行いますか?

この工事では二段構えにしました。足場が建つ約2週間前に工期・作業時間帯・足場設置日・高圧洗浄日・窓を開けられない日をまとめた書面を全戸のポストへ投函し、あわせて在宅の方には直接ご挨拶しています。そのうえで足場設置の前日と高圧洗浄の前日に、日付だけを書いた短い紙をもう一度投函しました。人は2週間前の紙を覚えていません。「その日が来る直前にもう一度」が、実際にはいちばん効きます。告知は施工店側で担当し、オーナー様の手間は最小限にしました。

工事中、洗濯物はまったく干せなくなりますか?

全期間ではありませんが、干せない日は確実に出ます。目安として、高圧洗浄の当日は外に干せません。水しぶきと汚れが飛ぶためです。外壁と付帯部を塗る期間中も、そのお部屋の面を塗っている日は室内干しをお願いすることになります。塗料の付着とにおいの移りを防ぐためです。この工事では、事前の書面に「洗濯物を取り込んでいただきたい日」を日付で書き出してお伝えしました。曖昧に『工事中はご注意ください』と書くより、日付で示したほうが入居者の方の負担は小さくなります。

空室があるかどうかで、工事の段取りは変わりますか?

変わります。空室が多い建物ほど段取りの自由度は上がり、足場の掛け方や塗る順番を効率優先で組めます。逆に満室に近い建物では、在宅の多い面を先に片づける、洗浄日を各戸に割り振る、といった調整が必要になり、工程に余裕を持たせる分だけ工期は延びやすくなります。この建物も入居者の方が生活している状態での施工だったため、外壁・屋根・シーリング・共用部・付帯部を含めて約4週間の工程を組みました。現地調査の段階で、空室の有無と各戸の在宅傾向をオーナー様に伺っておくと、無理のない計画が立てられます。

塗装工事がきっかけで退去されるのが不安です。何に気をつければよいですか?

退去につながりやすいのは、工事そのものより「聞いていなかった」という感覚です。予告なく窓の外に人が立つ、いつ終わるのか分からない、問い合わせ先が分からない。この三つが重なると不信感になります。対策はシンプルで、日付を具体的に伝えること、作業時間帯を守ること、そして入居者の方からの連絡先を施工店に一本化することです。この工事では、ご質問やご要望は当社が直接お受けする形にしました。オーナー様に苦情が集まらない体制をつくっておくと、関係がこじれにくくなります。

工事中、オーナーは毎日現場に立ち会う必要がありますか?

毎日の立ち会いは不要です。着工時の確認と、足場を解体する前の完了検査にお立ち会いいただければ十分です。工程の進み具合は写真で記録してご報告しますので、遠方にお住まいの方やご多忙な方でも進捗を把握できます。むしろ入居者の方からのご連絡は施工店で受けたほうがスムーズです。オーナー様が窓口になると、内容を確認して現場に伝えて折り返す、という往復が発生し、対応が遅れる原因になります。

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