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施工事例紹介

羽曳野市羽曳が丘|築19年サイディングを無機クリヤーで塗装|無機塗料のデメリットまで正直に

BEFORE 施工前
羽曳野市羽曳が丘の築19年の住宅 塗装前の外壁全景
AFTER 施工後
無機クリヤー塗装が完了した外壁の全景 柄はそのまま

「いちばん良い塗料にしたら、もう塗らなくて済みますか」

羽曳野市羽曳が丘のお客様から、現地調査のときにそう聞かれました。築19年。外壁は石積み調の柄が入った窯業系サイディングで、遠目にはまだきれいに見えるお家です。ご主人は「どうせ足場を組むなら、いちばん上のグレードを入れて、これで最後にしたい」とおっしゃいました。

その気持ちはよく分かります。塗り替えでいちばんお金がかかるのは塗料代ではなく足場と人件費です。グレードを一段上げても総額はそこまで跳ね上がらない。それなら上を選びたくなるのは自然なことです。

結論から言うと、このお家では最上位グレードである無機塗料を、しかも色をつけないクリヤー仕様で使いました。実際に施工しました。でもそれは「無機を塗れば塗らなくて済むから」ではありません。このお家の外壁が、無機塗料に向いていたからです。

無機塗料には、はっきりした弱点があります。価格が高いこと。塗膜が硬く、下地の動きについていきにくいこと。ひび割れの多い外壁には勧められないこと。そして「完全な無機塗料」というものは、そもそも存在しないこと。この記事では、羽曳が丘の工事の記録をたどりながら、無機塗料のデメリットを隠さずにお伝えします。読み終えたときに「うちは無機じゃなくていい」と思っていただけたなら、それはそれで正解です。

📍 羽曳野市の費用相場・業者選び・施工実績のまとめは「羽曳野市の外壁塗装|完全ガイド」をご覧ください。

羽曳野市羽曳が丘・築19年のお家で行った工事の概要

先に、この工事の中身をまとめておきます。数字はすべて実際の記録です。

施工場所 大阪府羽曳野市羽曳が丘
築年数 19年
外壁材 窯業系サイディング(石積み調の意匠)
施工内容 外壁塗装(無機クリヤー)/軒天塗装/付帯部塗装/外構の塀塗装/シーリング打ち替え
使用材料 外壁:KFケミカル「KFワールドセラグランツクリヤー」
シーリング:オート化学工業「オートンイクシード」
軒天・塀:水性ケンエース
施工期間 18日間
保証年数 10年
参考価格 187万円前後(税込)
参考価格は、同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安です。建物の大きさ、階数、劣化の程度、足場のかけやすさによって金額は変わります。

建てたのは大手ハウスメーカーのダイワハウスです。築20年を目前に、点検の折に塗装を勧められていたものの、金額が折り合わず見送っていた——そんな経緯でご相談をいただきました。

そもそも無機塗料とは何ですか?

無機塗料は有機成分と無機成分のバランスで性能が決まることを示した図解
無機という名前だけでなく、家との相性を見て選びます

塗料のカタログを見ると「シリコン」「フッ素」「無機」という言葉が並んでいます。この並びだけ見ると、無機というのは何か特別なブランドのように見えますが、そうではありません。成分の分類の話です。

「無機」は成分の話であって、ブランド名ではありません

化学の世界では、炭素を骨格に持つ物質を有機物、そうでない物質を無機物と呼び分けます。ガラス、石、砂、陶磁器、セラミック。これらはすべて無機物です。

思い出していただきたいのは、何十年も屋根に載っているお寺の瓦です。長い年月では風化しますが、数十年のスパンで見ればほとんど姿を変えません。

一方、塗料の主成分である樹脂は有機物です。アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素——名前は違っても、いずれも炭素の結合でつながった鎖のような構造をしています。この炭素の結合が、太陽の紫外線を浴びると少しずつ切れていく。切れた結果として起きるのが、色あせ、艶引け、チョーキング(触ると白い粉がつく現象)です。

無機塗料というのは、この紫外線で分解されにくい無機の成分を、塗料の中に組み込んだものです。ガラスやセラミックに近い成分を樹脂と組み合わせることで、紫外線による分解を受けにくくしよう、という考え方でつくられています。

完全な無機塗料は存在しません

ここが、無機塗料を検討するうえでいちばん大事なところです。

もし塗料が100パーセント無機物だけでできていたら、どうなるでしょうか。ガラスの板を想像してみてください。硬くて丈夫ですが、曲げれば割れます。そして、そもそも刷毛やローラーで壁に塗り広げて膜をつくることができません。塗料には「塗れること」「乾いて連続した膜になること」「多少はしなること」が必要で、それを担っているのが有機の樹脂です。

ですから建築用塗料として売られている無機塗料は、すべて無機成分と有機樹脂のハイブリッドです。「無機塗料」という呼び名から想像されるような、無機だけでできた塗料は流通していません。メーカーもそれを隠しているわけではなく、カタログには無機成分を「配合した」「複合した」といった書き方がされています。

そして——ここが厄介なところですが——無機成分をどれだけ配合すれば無機塗料と名乗ってよいか、という統一された基準はありません。配合率を公表していない製品も多くあります。つまり「無機」という言葉だけでは、その塗料の中身は分からないのです。

上塗りに使用した無機クリヤー塗料の缶
上塗りは下塗りとは別の材料です。無機成分を含む樹脂で、表面の保護層になります。

なぜ無機塗料は長持ちすると言われるのですか?

理屈の部分をもう少しだけ続けます。

外壁の塗膜が劣化していく原因は、大きく分けて紫外線、水分、熱、そして汚れの付着です。このうち日本の住宅でいちばん影響が大きいとされているのが紫外線です。

有機樹脂は、紫外線のエネルギーを受けて分子の結合が切られます。この現象は光劣化と呼ばれ、塗料メーカーが樹脂を改良し続けてきた最大のテーマでもあります。

無機成分は、その結合そのものが有機樹脂と異なるため、紫外線によって分解されにくいとされています。加えて、無機成分を含む塗膜は表面が親水性(水になじみやすい性質)を持つ製品が多く、雨が降ったときに汚れが水の膜に浮いて流れ落ちやすい、という説明がなされることもあります。

ただし、この「汚れにくい」という性質は製品によって程度が違いますし、立地条件——幹線道路沿いか、緑が多い場所か、北面で乾きにくいか——に大きく左右されます。無機だから汚れない、という言い方はできません。

耐用年数の「◯年」という数字はどこから来ていますか?

塗料の比較表には、必ずと言っていいほど耐用年数が書かれています。無機塗料であれば、シリコンやフッ素より長い年数が書かれていることが多いはずです。

この数字がどうやって出てきているかというと、多くは促進耐候性試験の結果からの推定です。試験機の中で、キセノンランプやカーボンアーク灯といった光源で強い紫外線を当て、同時に水を吹きかけたり温度を上下させたりして、屋外での何年分にも相当する負荷を短期間でかけます。そして塗膜の光沢がどれくらい残っているか(光沢保持率)を測り、そこから屋外での年数を換算しています。

この試験は塗料同士を公平に比べるためには非常に有効な方法です。ただし、次のことは知っておいてください。

  • 試験は塗料そのものの性能を測るもので、あなたのお家の外壁の状態や下地の動きは考慮されていません
  • 実際の紫外線量、雨量、海からの距離、排気ガス、日照の方位によって、劣化のスピードは変わります
  • 塗膜が健全でも、その下のシーリング材や外壁材そのものが先に傷むことがあります
  • 塗る職人の希釈量、塗布量、乾燥時間の取り方によっても結果は変わります

ですから当社では、耐用年数はあくまで試験に基づく目安としてお伝えしています。「無機だから◯年もちます」という言い方は、私たちはしません。できないからです。

今回のお家にお出ししている保証は10年です。これは塗料の想定寿命そのものではなく、施工に対して当社が責任を持つ期間としての年数です。

無機塗料のデメリットは?現場で感じる5つの弱点

無機塗料のデメリットとして価格、硬さ、ひび割れ、施工技術、他部位の寿命を示した図解
いちばん高い塗料が、必ずいちばん良い選択とは限りません

ここからが本題です。無機塗料には、カタログの表側には出てきにくい弱点があります。5つに整理しました。

デメリット1|価格がいちばん高い

これは分かりやすい弱点です。塗料のグレードとしては最上位に位置づけられているため、材料費が高くなります。一般に「シリコンよりフッ素、フッ素より無機のほうが平方メートルあたりの単価が高い」と業界では言われています。ただしこれは業界で一般的に言われている目安であり、当社の見積金額を示すものではありません。実際の金額は、面積、下地の状態、必要な補修の量、足場のかけやすさで大きく変わります。

グレード別に総額がどう変わるか、どこまで払う価値があるのかという損得の話は、それだけで一本の記事になる内容です。詳しくは外壁塗装の塗料ランキング|シリコン・ラジカル・フッ素・無機を耐用年数と単価で比較をご覧ください。

デメリット2|塗膜が硬く、下地の動きに追従しにくい

これが、価格よりもはるかに重要な弱点です。

無機成分は、ガラスや石に近い性質を持っています。硬くて丈夫。裏返せば、しなやかさに乏しいということです。塗膜が硬いということは、下地が動いたときに一緒に伸び縮みしてくれないということでもあります。

外壁は、思っている以上に動いています。夏の日射で熱せられれば膨張し、夜になれば縮む。地震や大型車の通行でも揺れます。木造住宅であれば、木材の乾燥収縮でもわずかに動きます。柔らかい塗膜はこの動きにある程度ついていきますが、硬い塗膜はついていけずに割れることがあります。

今回の工事でも、この性質がはっきり出た場面がありました。通常の塗装工事は、先にシーリングを打ち替えてから、その上に塗料を重ねていきます。ところが無機クリヤーのような硬い塗料をシーリング材の上に塗ると、シーリングが動いたときに塗膜が割れてしまいます。だから今回は順番を逆にして、塗装をすべて終えてからシーリング工事をしました。塗料が硬いという性質が、工程そのものを組み替えさせたわけです。

デメリット3|ひび割れの多い外壁には向かない

デメリット2の続きです。すでにひび割れ(クラック)がたくさん入っているモルタル外壁に無機塗料を塗るとどうなるか。ひび割れというのは、そこが動いている証拠です。動いている場所の上に硬い膜を張れば、その膜は同じ場所で割れます。

ひび割れを樹脂で埋めたり、弾性のある下塗り材を入れたりして対処する方法はあります。ただ、弾性の下塗りでしなやかさを確保しても、上に硬い塗膜を乗せれば上塗りの硬さに引っ張られます。それなら、はじめから追従性を優先した塗料を選ぶほうが家のためになることが多いのです。

「いちばん高い塗料を塗ってください」と言われても、外壁がクラックだらけのモルタルであれば、私たちは別のグレードをお勧めします。高いものを売らないほうが売上は下がりますが、5年後に「割れているんだけど」と言われるほうがずっと困ります。

窯業系サイディングの表面に入った細いひび割れ
現地調査で見つかった小さなひび割れ。塗膜の防水性が切れかけているサインです。

羽曳が丘のお家で見つかったひび割れは、写真のとおり細く、数も限られていました。窯業系サイディングは工場でボードとして成形された外壁材で、モルタルのように現場で塗り付けてつくるものではないため、面全体に細かいクラックが走るという壊れ方はしにくい素材です。この「下地が比較的動きにくい」という条件が、無機塗料を選べた大きな理由でした。

デメリット4|施工に手間と技術がいる

無機塗料は、扱いが素直ではありません。

材料が硬い分、下地の状態に対してシビアです。汚れが残っていれば密着が落ち、下地が乾ききらないうちに塗れば後々のトラブルにつながります。希釈の割合、塗布量、塗り重ねまでの乾燥時間も、メーカーが定めた範囲を守る必要があります。ここを外すと、いくら高い材料でも本来の性能は出ません。

今回使ったKFワールドセラグランツクリヤーは弱溶剤タイプで、塗っている間は独特のにおいがありました。水性塗料に比べればにおいは出ますので、お住まいのご家族やご近所への配慮も必要になります。窓を閉めていただく期間や洗濯物の扱いについては、事前にご説明しました。

さらにクリヤー仕様は色がついていないため、塗り残しやムラが目で追いにくくなります。塗った直後は艶で判別できますが、乾けば分かりにくい。どこまで塗ったかを常に把握しながら進める必要がありました。

2回目まで塗った面と1回目までの面の艶の違い
右が2回塗り終えた面、左が1回目まで。塗り重ねることで艶の深さが変わります。

デメリット5|塗料だけ長持ちしても、家の他の部分は先に寿命が来る

これが、いちばんお伝えしたい弱点です。

冒頭のお客様の「もう塗らなくて済みますか」という質問に対する、正直な答えがここにあります。塗料の寿命が延びても、家のメンテナンスが終わるわけではありません。

足場を組む必要があるのは、塗装だけではありません。目地のシーリング材、屋根、雨樋、板金、ベランダの防水。これらはそれぞれ別の寿命を持っています。

仮に塗膜が非常に長く持ったとしても、その間にシーリング材が切れれば、そこから水が入ります。屋根の塗膜が先に劣化すれば、屋根のために足場を組むことになります。塗料のグレードを上げることは「次の足場までの期間を延ばす」ことに直結しない——これは知っておいていただきたい事実です。

だからこそ今回は、外壁だけでなく、シーリングも耐候性の高い材料で全打ち替えし、軒天、雨樋などの付帯部、外構の塀まで含めて一度に手を入れました。塗料のグレードだけを上げて他を放置するくらいなら、グレードを一段下げて範囲を広げたほうが、家全体としては長持ちします。

カッターで切り込みを入れて既存のシーリング材を撤去する作業
目地の両端にカッターを入れて古いシーリング材を引き抜きます。塗膜が健全でも、シーリング材は別の寿命を持っています。

無機塗料が向く家・向かない家の見極めは?

無機塗料が向いている家と勧めない家を、下地やひび割れの状態で比較した図解
塗料の性能より先に、外壁の状態を確認します

ここまでの内容を、判断できる形にまとめます。

無機塗料が向いているお家

  • 下地が動きにくい——窯業系サイディング、金属サイディング、ALCなど、面全体に細かいクラックが出にくい外壁
  • 今ある劣化が軽い——ひび割れや欠け、反りが少なく、下地補修の必要が限られている
  • 外壁の柄や色を残したい——今回のようにクリヤーで仕上げたい場合、下地がきれいであることが前提になります
  • これから長く住む予定がある——投資の回収に時間がかかるため、居住期間が長いほど検討する意味が出ます
  • 外壁以外の部位も同時に手を入れられる——シーリング、屋根、付帯部を含めた計画が立てられている

無機塗料を勧めないお家

  • モルタル外壁でひび割れが多い——硬い塗膜が下地の動きについていけません
  • 外壁材の反りや浮きが出ている——塗料ではなく、まず下地の処置が必要です
  • 近い将来に売却や建て替えを考えている——長寿命の価値が回収できません
  • 屋根や防水に先に手を入れるべき状態——限られた予算は、雨が入る可能性が高い部位から使うべきです
  • 予算を目一杯まで使うことになる——塗料代に寄せすぎて補修や下地処理を削るのは本末転倒です

最後の項目は特に強調しておきたい点です。同じ予算なら、塗料のグレードを一段下げてでも、下地補修とシーリングにきちんとお金をかけたほうが、家は長持ちします。塗料は表面の膜であって、家の防水そのものではありません。

シリコンやフッ素と、無機は何が違うのですか?

位置づけだけ、簡単に整理しておきます。

塗料は主成分となる樹脂の種類でグレード分けされていて、一般にはアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、無機という順で耐候性が上がり、価格も上がるとされています。近年はここにラジカル制御型という考え方の製品も加わっています。

ざっくり言えば、シリコンからフッ素、フッ素から無機へとグレードが上がるにつれて、紫外線に対する耐性は上がり、塗膜は硬くなり、価格は上がるという方向に動きます。「上位グレードほど万能」ではなく、「上位グレードほど硬く、下地を選ぶようになる」という理解のほうが実態に近いと思います。グレードごとの耐用年数の考え方や、ラジカル制御とシリコンの違いは、それぞれ別の記事で扱っています。

現地調査で見えたこと

ここからは工事の記録です。羽曳が丘は羽曳野市の北西部、丘陵地に造成された住宅地で、同じ時期に建った戸建てが並んでいます。築年数の近いお家が多い地域です。

外壁のひび割れとシーリングの状態

窯業系サイディングは、素地のままでは水を吸うため、工場出荷時に表面が塗装されています。この表面の防水性が切れてくると、ひび割れや反りが出てきます。

ダイワハウスのお家は外壁材の厚みが2.0センチ以上あり、しっかりした素材です。ただし厚い分、いったん変形してしまうと元に戻すことはできません。だからこそ、傷みが小さいうちに手を入れる意味があります。

経年で硬化して隙間が出はじめた縦目地のシーリング材
目地のシーリング材は表面が硬くなり、端に細い隙間が出はじめていました。

ボードとボードの継ぎ目(目地)には、シーリング材が充填されています。ここが家の中に湿気を入れないための境界線です。経年で表面が硬くなり、痩せて隙間が空いたり、ひび割れたりします。

サッシまわりに打たれたシーリング材の状態
シーリング材は目地だけでなくサッシまわりにも入っています。ここも補修の対象です。

シーリング材は目地だけでなく、サッシまわりにも入っています。塗装工事の際は、どちらも補修の対象になります。

汚れ、付帯部、そして塀

換気扇フードの下に流れた黒い汚れ
換気扇の下は油分を含んだ汚れが流れ落ち、どうしても黒いスジになります。

換気扇フードの下は、油分を含んだ空気が壁を伝うため、どうしても黒いスジになります。洗浄と塗装の対象です。

日当たりの良い面で色あせした付帯部
雨戸や庇などの付帯部は、日当たりの良い面から先に色あせていきます。

付帯部とは、外壁以外で塗装できる箇所の総称です。雨樋、水切り、庇、雨戸など。日当たりの良い面から色あせが進んでいました。

塗装前の外構の塀 雨だれによる黒ずみ
雨ざらしの塀は黒ずみが出やすい場所です。今回は塀も塗装範囲に入れました。

外構の塀も雨ざらしで、黒ずみが出ていました。今回の工事範囲に含めています。

工事の記録:無機クリヤーはこう塗りました

無機クリヤー塗装の高圧洗浄、下塗り、上塗り、付帯部、シーリングの工程図
柄を残す塗装ほど、下地と目地の仕上げが大切です

まず洗浄から

高圧洗浄機でサイディング外壁を洗浄している様子
塗装の前に高圧洗浄。汚れや粉化した古い塗膜を落とさないと、上に塗る塗料が密着しません。

塗装工事は洗浄から始まります。汚れや粉化した古い塗膜が残ったまま塗料を乗せると、密着が確保できません。上位グレードの塗料も、密着していなければ意味がありません。

洗浄で黒い汚れが落ちた換気扇フード下の外壁
洗浄だけで、換気扇の下のスジ汚れはここまで落ちました。

気になっていた換気扇下の汚れは、洗浄だけでここまできれいになりました。

下塗り

無機クリヤー塗装で使用した下塗り材の缶
クリヤー塗装は下塗りから専用の材料を使います。透明のまま密着層をつくる工程です。

クリヤー塗装は、下塗りから専用の材料を使います。色のついた塗料であれば下塗りは白や透明の下地材でよいのですが、上から色を乗せないクリヤー仕様では、下塗り材そのものが透明でなければなりません。

なお、クリヤー塗装が「できる壁」と「できない壁」の見分け方——つまり適用条件の判断については、話が長くなるためここでは触れません。今回のお家は柄を活かす前提で条件を満たしていた、という事実だけ記しておきます。過去にクリヤー仕上げで施工した八尾市神宮寺のサイディング外壁の事例も参考になるかと思います。

上塗り

ローラーで外壁に無機クリヤーを1回目塗装している様子
ローラーで塗り広げます。今回の材料は弱溶剤タイプで、独特のにおいがありました。
1回目の無機クリヤーを塗り終えたサイディングの表面
塗った部分は艶が出ます。色は変わらず、柄がそのまま残っているのが分かります。

塗った部分には艶が出ます。色は変わらないので、写真では艶の差でしか判別できません。

下塗りが乾いてから、別の材料である上塗りに進みます。塗り漏れがないよう、面を区切りながら進めました。

無機クリヤー塗装後のサイディングの石積み調の柄
もとの色の濃淡やグラデーションを消さずに、表面だけを保護できました。

仕上がりです。もとの石積み調の柄、色の濃淡、目地の陰影がそのまま残っています。クリヤーで塗る最大の意味はここにあります。ベタ塗りしてしまえば、この意匠は二度と戻りません。

軒天と付帯部、そして塀

軒天の塗装に使用したつや消しタイプの塗料の缶
軒天は外壁とは別の材料。つや消しで仕上がるタイプを使いました。

軒天(軒裏の天井部分)は、日光が当たりにくく湿気がこもりやすい場所です。外壁とは求められる性質が違うため、つや消しで仕上がる別の材料を使いました。

塗装が終わった軒天 つや消しの落ち着いた仕上がり
見上げながらの作業になる軒天。つや消しで仕上げると影が落ち着いて見えます。
雨樋などの付帯部をローラーで塗装している様子
雨樋や水切りなどの付帯部も2回塗り重ねて仕上げます。

付帯部は2回塗り重ねて仕上げます。見た目が整うだけでなく、素材の保護にもなります。

塗装が完了した外構の塀
塀はブロックの上から塗るため、湿気を通す塗料を選んでいます。

外構の塀は、軒天と同じ材料で塗りました。塀はブロックを積んだ上から塗装しているため、湿気を通さない塗料を使うと、内部にこもった水分の逃げ場がなくなり、塗膜の剥離につながることがあります。場所ごとに材料を選ぶというのは、こういうことです。

最後にシーリング工事(化粧打ち)

今回使用した高耐候タイプのシーリング材の外箱
シーリング材にもグレードがあります。今回は耐候性の高いタイプを選びました。

シーリング材にもグレードがあります。今回は耐候性の高いオートンイクシードを選びました。外壁に高いグレードの塗料を使うなら、シーリングだけ標準品というのはバランスが悪くなります。

そして先に書いたとおり、無機クリヤーは硬いため、シーリング材の上に塗ると割れる可能性があります。そこで塗装をすべて終わらせてから、シーリング工事をしました。シーリング材が塗膜に覆われず、外気にむき出しのまま仕上がる工法を化粧打ちと呼びます。今回は全て化粧打ちです。だからこそ、シーリング材そのものの耐候性が重要になりました。

撤去した既存シーリング材を詰めた土のう袋
打ち替えのために撤去した古いシーリング材。このお家は目地の量が多く、袋5つ分になりました。

既存のシーリング材は、両端にカッターで切り込みを入れて引き抜いて撤去します。一般的な戸建てだと土のう袋1.5〜2袋分といったところですが、このお家は目地の量が多く、袋5つ分になりました。それだけ継ぎ目が多いということでもあります。

専用のガンで目地に新しいシーリング材を充填している様子
専用のガンで、目地の奥まで新しいシーリング材を充填します。

プライマー(下地と新しいシーリング材の密着を良くする下塗り材)を塗ってから、専用のガンで充填します。

打ち替えが終わった目地のシーリング材
ヘラで押さえ、マスキングテープを剥がして完成。塗装後に仕上げる化粧打ちです。

ヘラで押さえて中の空気を抜き、マスキングテープを剥がして完成です。サッシまわり、横目地も同様に補修しました。

費用と保証はどうなりましたか?

この工事の参考価格は187万円前後(税込)です。外壁の無機クリヤー塗装、軒天塗装、付帯部塗装、外構の塀の塗装、そしてシーリングの全打ち替えを含んだ金額で、施工期間は18日間でした。

この金額は、同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安であり、そのままお客様のお家に当てはまるものではありません。

保証は10年です。繰り返しになりますが、これは「塗膜が10年で寿命を迎える」という意味でも、「10年間は絶対に何も起きない」という意味でもありません。施工に起因する不具合について、当社が責任を持って対応する期間としての年数です。

いちばん高い塗料が、いちばん良い選択とは限りません

「いちばん良い塗料にしたら、もう塗らなくて済みますか」

最初の質問に戻ります。私たちがこのときお答えしたのは、こういう内容でした。

——塗らなくて済むようにはなりません。ただ、お宅の外壁は窯業系サイディングで、ひび割れも少なく、下地が動きにくい。もともとの柄もきれいに残っている。この条件なら、無機のクリヤーは選ぶ意味があります。ただしシーリングも一緒に良いものに替えさせてください。塗料だけ上等にしても、継ぎ目が先に切れたら意味がないので。

もしこのお家の外壁がモルタルで、細かいひび割れが全面に走っている状態だったら、私たちは無機を勧めませんでした。硬い塗膜が下地の動きについていけず、同じ場所で割れるからです。そのときは追従性を優先した塗料を提案して、浮いた予算を下地補修に回したはずです。

塗料選びは、グレードの上下を選ぶことではなく、お家の状態に合わせることです。無機塗料は確かに最上位に位置づけられていますが、それは「どんな家にも最適」という意味ではありません。価格が高く、塗膜が硬く、下地を選び、施工にも気を遣う。デメリットを分かったうえで、条件が合ったときにだけ選べばいい塗料です。

みのりペイントは大阪市平野区を拠点に、羽曳野市を含む近隣エリアで施工しています。「無機がいいと聞いたけれど、うちに合っているのか分からない」という段階でのご相談で構いません。お家の写真をお送りいただければ、外壁材の種類と劣化の状態を見たうえで、どのグレードが適しているか、そもそも今塗るべきかを正直にお伝えします。

よくあるご質問

無機塗料は本当に汚れにくいのですか?

無機成分を含む塗膜は表面が親水性を持つ製品が多く、雨で汚れが流れ落ちやすいと説明されています。ただし程度は製品ごとに異なり、立地条件の影響も大きく受けます。幹線道路沿いで排気ガスを受ける面、日が当たらず乾きにくい北面、植栽が近く胞子が飛んでくる面では、グレードにかかわらず汚れは付きます。「無機だから汚れない」ではなく「汚れが落ちやすい傾向がある製品が多い」という理解が実態に近いです。

無機塗料を塗れば、次に足場を組むまでの期間は延びますか?

塗膜の寿命だけを見れば延びる可能性はありますが、足場を組む理由は塗装だけではありません。シーリング材、屋根、板金、ベランダ防水は、それぞれ別の寿命を持っています。どれか一つが先に限界を迎えれば、そのために足場が必要になります。塗料のグレードを上げる判断は、外壁以外の部位の計画とセットで考えることをお勧めします。

「無機塗料」と書いてあれば、どのメーカーの製品でも同じですか?

同じではありません。無機成分をどれだけ配合すれば無機塗料と名乗ってよいかという統一基準はなく、配合率を公表していない製品もあります。同じ「無機」でも中身と価格帯には幅があります。見積書に「無機塗料一式」とだけ書かれている場合は、メーカー名と製品名を確認してください。製品名が分かれば、メーカーのカタログで仕様を調べることができます。

無機塗料は木部や鉄部にも使えますか?

製品ごとに適用できる下地が決まっており、外壁用の無機塗料をそのまま木部に使えるとは限りません。特に木部は、湿度によって伸び縮みし、樹脂の中でも動きの大きい素材です。硬い塗膜との相性は良くありません。今回の工事でも、軒天と外構の塀は外壁とは別の材料を使っています。「家中を同じ塗料で塗る」のではなく、部位ごとに適した材料を選ぶのが基本です。

無機塗料で塗った外壁は、次に塗り替えるとき困りませんか?

次回の塗り替えでは、既存の塗膜が硬く緻密なため、上に塗る塗料の密着をどう確保するかが課題になります。実際には、その塗膜に適した下塗り材を選ぶことで対応します。次に工事をする業者に「前回どの製品で塗ったか」が分かるよう、使用材料が記載された書類や保証書は保管しておいてください。製品名が分かるだけで、次の工事の精度は上がります。

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