東大阪市吉田本町|ベランダ床のひび割れを通気緩衝工法で防水|3日間の全工程


「ベランダの床、ひび割れてるんです。これって、放っておいたらダメなやつですよね」
東大阪市吉田本町。築30年を越えた戸建てにお住まいのお客様から、そんなご連絡をいただいたのが始まりでした。洗濯物を干そうとしゃがんだとき、コンクリートの床に走る細い線が目に入った。気になって指でなぞってみたら、思っていたより深かった——。ベランダのお手入れは、家を建ててから一度もされたことがないとのことでした。
実際にうかがってみると、ひび割れは床だけではありませんでした。床から垂直に立ち上がった、外壁との取り合いの部分にも同じように入っている。そしてもうひとつ。このお宅のベランダは全部で3箇所。そのすべてが、似た傷み方をしていました。
3日後。トップコートを塗り終えたベランダを見て、お客様は「床って、こんなにきれいになるものなんですね」とおっしゃいました。30年ぶんの汚れとひび割れが消えて、つるりとした一枚の面に戻っていました。
この記事は、その3日間の記録です。選んだのはウレタン防水の通気緩衝工法(つうきかんしょうこうほう)。同じウレタン防水でも、下地に直接塗る「密着工法」ではなく、あいだにシートを挟んで湿気の逃げ道をつくる工法です。この規模の防水工事であれば、同等の内容を現在の価格でお見積りした場合20万円前後が目安になります。
なぜ密着工法ではなく通気緩衝工法だったのか。脱気筒という金物は何のためにあるのか。清掃からトップコートまでの全工程を、16枚の写真で公開します。
工事データ
| 施工エリア | 大阪府東大阪市吉田本町 |
|---|---|
| 築年数 | 30年 |
| 建物 | 戸建て/ベランダ床はコンクリート下地(ベランダは合計3箇所) |
| 施工内容 | ベランダ床の防水工事(床面+立ち上がり)/立ち上がり部のひび割れ補修 |
| 工法 | ウレタン防水 通気緩衝工法(自着シート+脱気筒) |
| 工期 | 3日間 |
| 参考価格 | 20万円前後(同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安です) |
※参考価格は、当時の工事金額をもとに、同じ内容を現在の価格でお見積りした場合の目安を税込で示したものです。ベランダの面積・箇所数・下地の傷み具合・立ち上がりの高さによって金額は変わりますので、実際の工事は現地調査のうえでお見積りいたします。
「雨漏りしてからでは遅い」——ご相談のきっかけ
お客様が一番気にされていたのは、階下への雨漏りでした。ベランダの真下は部屋です。「もし水が入ったら、天井にシミが出るんですよね」と。
これは、まったくその通りです。ベランダの床は、私たちが思っている以上に「屋根」に近い役割を持っています。雨が降れば水が溜まり、排水口へ流れていく。その水を室内に入れないよう食い止めているのが、床の表面にある防水層です。そこにひび割れが入るということは、水の入口ができているということになります。
ただ、幸いだったのはまだ雨漏りが起きていなかったことです。天井にシミが出てからでは、防水工事だけでは終わりません。濡れた下地を乾かす時間が要りますし、内装の補修まで必要になることもあります。「ひび割れが気になる」の段階でご連絡をいただけたのは、結果的にいちばん費用のかからないタイミングでした。

ベランダの床がひび割れたらどうする?

「防水層」はどこからどこまでか
ベランダの防水と聞くと、多くの方が「床の面」だけを思い浮かべます。ですが実際には、床面と、床から垂直に立ち上がって外壁との取り合いに達するまで——この立ち上がり部分までが、ひとつながりの防水層です。
理由は単純で、雨は真上からだけ降ってこないからです。風を伴えば横からも吹きつけますし、床に溜まった水は排水が追いつかなければ壁際まで上がってきます。床だけを防水しても、立ち上がりが無防備なら、そこから水が回り込んでしまう。だから床と立ち上がりはセットで考えます。
今回のお宅も、まさにその立ち上がり部分にひび割れが見られました。床のひび割れに気を取られていると見落としやすい場所です。

放置するとどうなるか
ひび割れを放っておくと、そこから雨水がコンクリートの内部へ入っていきます。入った水はすぐには出てきません。内部に留まり、少しずつ下へ向かいます。その先にあるのが階下の天井です。ベランダの下の部屋の天井に雨染みが出る——これがよくある進み方です。
厄介なのは、雨染みが出た時点ではもう「入口」が一箇所とは限らないことです。床のひび割れなのか、立ち上がりなのか、それとも排水口まわりなのか。水は入った場所と出てくる場所が一致しないので、原因を特定する手間そのものが増えていきます。床の表面が見えているうちに手を打つほうが、はるかに簡単です。
ベランダは「歩く場所」だから傷みが早い
もうひとつ、ベランダ特有の事情があります。人が歩くことです。
屋根の防水層は、点検のとき以外は誰も乗りません。ところがベランダは、洗濯物を干し、布団を叩き、エアコンの室外機が載り、物置やプランターが置かれ、その周りを毎日歩きます。防水層の表面を守っているのはトップコートという薄い保護塗膜ですが、これは靴底や物の移動で少しずつ削れていきます。
トップコートが摩耗して薄くなると、その下のウレタン防水層が直接、紫外線と雨にさらされます。そうなると防水層自体の劣化が一気に進む。ベランダの防水が「屋根より短いサイクルで手入れが要る」と言われるのは、このためです。
通気緩衝工法とは?密着工法との違い

ここからが、この工事のいちばん大事な判断です。
ウレタン防水には、大きく分けて2つのやり方があります。密着工法と通気緩衝工法です。仕上がった見た目はほとんど同じですが、中の構造がまったく違います。
密着工法:下地に直接、防水材を塗る
密着工法は、名前のとおり、下地の上に直接ウレタン防水材を塗り重ねていく方法です。工程が少なく、工期も費用も抑えられます。下地が健全で、水分をほとんど含んでいない場合には、これで十分に機能します。
通気緩衝工法:下地と防水層のあいだに一層はさむ
通気緩衝工法は、下地とウレタン防水層のあいだに通気緩衝シート(自着シート)を1枚はさみます。このシートは、裏面に細かい通気の道が通っている特殊なもので、下地と防水層を「くっつけきらない」ために入れます。
くっつけないほうがいい、というのは直感に反するかもしれません。なぜそうするのか。理由は水蒸気にあります。
なぜ通気層が必要か——「フクレ」という失敗
コンクリートは、見た目には固い塊ですが、内部に無数の細かい隙間を持っていて水分を含みます。築30年ものあいだ雨に当たり、ひび割れまで起こしている床であれば、その内部にはかなりの水分が溜まっていると考えるのが自然です。
この状態で密着工法をやるとどうなるか。防水層は水を通しませんから、下地の水分は行き場を失います。日射でコンクリートが温まると、内部の水分は水蒸気に変わって体積が膨らむ。その圧力が、防水層を内側から押し上げるのです。
これがフクレです。床のあちこちが風船のようにぷっくりと浮き上がり、そこを踏めば当然、防水層は破れます。せっかく塗った防水が、数年で使いものにならなくなる。密着工法が下地を選ぶ工法だ、と言われるのはこのためです。
通気緩衝工法は、この問題を「逃がす」ことで解決します。シートの中を通り道にして、下地から出てきた水蒸気を横へ移動させる。防水層を押し上げる前に、別の出口へ導いてしまうわけです。
脱気筒(だっきとう)は何のためにある?

シートの中に集まった水蒸気は、どこかから外へ出してやらなければ意味がありません。その出口が脱気筒(だっきとう)です。
完成したベランダの隅に、小さな筒状の金物がぽつんと立っているのを見たことはないでしょうか。あれが脱気筒です。シートの通気層とつながっていて、下から上がってきた水蒸気を煙突のように空へ逃がします。雨は入らず、蒸気だけが出ていく構造になっています。
今回使ったものはステンレス製で、雨が直接当たる屋外に置いても錆びません。取り付け位置にも決まりごとがあります。ベランダの中央付近には付けません。洗濯物を干すときにつまずいてしまうからです。できるだけ端のほう、人の動線から外れた位置に据えます。性能の話に見えて、実は毎日の使い勝手の話でもあります。

費用は上がる。それでも通気緩衝工法を選んだ理由
通気緩衝工法は、密着工法より工程が増え、材料も増え、工期も費用も上がります。正直に申し上げれば、安いほうを選びたくなるお気持ちはよく分かります。
ただ、この工法にはこういう性格があります。
- 下地の劣化具合に左右されにくい(もちろん下地処理は必要です)
- 下地のひび割れが防水層に影響しにくい——ひびの動きをシートが受け止めます
- きちんと施工すれば、その後の手入れが少なくて済む
逆にデメリットもはっきりしています。
- 密着工法より工期も費用もかかる
- シートの貼り方、脱気筒の位置、立ち上がりの納まりなど、職人の技術と経験が要る
そのうえで今回は、通気緩衝工法をご提案しました。築30年、下地はコンクリート、しかもひび割れが出ている。この条件で密着工法を選べば、フクレのリスクを抱えたまま10年を過ごすことになります。数年でやり直しになれば、そのときは既存の防水層を撤去する費用も加わる。最初に少し多く払っておくほうが、結果として安く済む——そう考えてお伝えし、ご納得のうえで着工しました。
3日間の全工程

1日目|清掃とプライマー、そして自着シート
最初にやるのは掃除です。地味ですが、ここを飛ばすと後が全部だめになります。
ベランダの床には、砂ぼこり、落ち葉のかけら、洗濯洗剤の残り、コケなど、30年ぶんの汚れが積もっています。この上に材料を塗っても、材料は汚れの層に乗るだけで、下地には届きません。どんなに良い塗料でも、汚れの上では密着不良を起こします。防水工事の耐久年数は、実はこの最初の清掃で半分決まると言っても言いすぎではありません。

床が乾いたら、プライマーを塗ります。下地とシートをしっかり食いつかせるための、接着剤のような役割です。プライマーは無色なので色は付きませんが、下地が吸い込むぶん、塗った場所は色が濃くなります。この濃淡が、塗り残しを見つける目印にもなります。

プライマーが乾ききったのを確かめてから、いよいよシートを貼ります。端から、ロールを転がすようにして進めます。ここで曲がると後の一枚一枚がずれていくので、まっすぐ転がすことに神経を使う工程です。

端から端まで貼り終えたら、床面の下ごしらえは完成です。このシートの中を湿気が通ることで、上に塗る防水層と下地のコンクリートが絶縁されます。見た目には「ただシートを貼っただけ」ですが、この一枚があるかないかで、10年後の姿がまるで変わります。

続けて、先ほどの脱気筒を取り付けます。これでシートの中を移動してきた水蒸気に、外への出口ができました。
2日目|立ち上がり部のひび割れ補修
2日目は、立ち上がり部分の下地処理からです。
立ち上がり部には自着シートを貼りません。垂直な面には水が溜まりませんし、シートを回すと外壁との取り合いの納まりが厚くなってしまうためです。そのかわり、ひび割れは一本ずつ手作業で埋めていきます。
使うのはモルタル専用のパテ。コーキングガンでひび割れの中へしっかり押し込むように充填します。表面をなでるだけでは、ひびの奥に空洞が残ってしまいます。

充填したら、ゴムベラで均します。盛り上がったまま乾かすと、その凹凸がそのまま仕上がりに出てしまうので、周囲の面と段差がなくなるまで押さえます。


2〜3日目|ウレタンを2回、そしてトップコート
下地が整ったら、いよいよウレタン防水材を流していきます。
ウレタンは液状の材料なので、床に流して均します。段差ができないよう、均等な厚みで広げていくのが1回目です。

そして必ず2回塗り重ねます。ここは省略できません。ウレタン防水は「厚み」で水を止める材料だからです。1回で薄く仕上げてしまうと、見た目は同じでも防水としての性能が出ません。2回重ねることで、必要な膜厚を確保します。

2回目のウレタンが乾いたら、最後にトップコートです。名前のとおり「上に載せる塗膜」で、塗ったウレタン防水層を紫外線や摩耗から保護する役割があります。
先ほど「ベランダは歩く場所だからトップコートの摩耗が早い」と書きました。裏を返せば、このトップコートさえ定期的に塗り直しておけば、下のウレタン防水層は長く生き延びるということです。ベランダ防水のメンテナンスは、ほとんどがこのトップコートの塗り替えを指します。

ベランダ3箇所が、そろって同じ症状だった
現地調査のときに気になっていたことがあります。このお宅にはベランダが合計3箇所ありましたが、3箇所とも傷み方がそろっていたのです。床のコンクリートにひび割れがあり、立ち上がりにも同じように入っている。傷み方の程度まで、驚くほど似ていました。

これは偶然ではありません。理由ははっきりしています。3箇所とも、同じ時期に、同じ材料で、同じ職人がつくったものだからです。
防水層には寿命があります。同じ日にスタートしたものは、同じような環境に置かれていれば、同じような時期に寿命を迎えます。人間の年齢に近い感覚です。「1箇所だけ急に傷んだ」のではなく、3箇所とも、そろそろその時期だった——それが正確な見方です。
ですので、私たちがベランダの防水でご相談を受けたときは、必ずそのお宅にあるベランダを全部見せていただきます。症状がいちばん目立つ1箇所だけを直しても、残りが数年以内に同じ状態になる可能性が高いからです。
もっとも、「だから全部いっぺんにやってください」と申し上げたいわけではありません。予算のご事情もありますし、傷み方に差があれば優先順位もつきます。大事なのは、いま直さない場所が、いつごろ順番を迎えるのかを知っておくことです。それが分かっていれば、次の出費を予定に入れておけます。突然の出費と、予定していた出費は、同じ金額でも重さがまるで違います。
完工の日
3日目の午後、トップコートが乾いてから、お客様に見ていただきました。
ひび割れの線は消え、30年ぶんの汚れも消え、つるりとした一枚の面に戻ったベランダ。端には脱気筒が一本、静かに立っています。「これ、何ですか」と聞かれたので、「下から上がってくる湿気の煙突です」とお答えしました。
「じゃあ、これがあるから膨らまないんですね」——そのとおりです。見えるのは筒の先端だけですが、その下にはシートの通気層が床いっぱいに広がっていて、コンクリートが吐き出す水蒸気を、毎日少しずつ外へ逃がし続けています。
防水工事は、仕上がってしまえば密着工法なのか通気緩衝工法なのか、見た目では判別できません。違いが出るのは数年後です。
最後に、お客様にはこうお伝えしました。「トップコートだけは、5年前後で塗り直してください。それだけで、下のウレタンはずっと長持ちします」と。
よくあるご質問
Q. ベランダ防水の寿命は何年ですか?
ウレタン防水層そのものはおおむね10年前後が目安です。ただし表面を守るトップコートは5年前後で摩耗してくるので、5年ごとにトップコートを塗り直すのが基本の考え方になります。トップコートの塗り替えを続けていれば、下のウレタン防水層はさらに長く使えます。ベランダは人が歩き、物を置き、室外機が載る場所なので、同じ防水でも屋根より摩耗が早い点にご注意ください。
Q. 通気緩衝工法と密着工法、どちらを選べばいいですか?
下地の状態で決まります。下地が健全で水分をあまり含んでいないなら密着工法で十分です。コンクリート下地で築年数が経っている、ひび割れがある、過去に雨漏りや防水層のフクレが出たことがある、といった場合は通気緩衝工法をおすすめします。密着工法は費用を抑えられますが、下地の水分が逃げ場を失って防水層を内側から押し上げ、フクレて破れるリスクがあるためです。ご自身で判断するのは難しいので、現地調査でご説明します。
Q. 脱気筒は必ず必要ですか?見た目が気になります。
通気緩衝工法では必要です。シートの中に集めた水蒸気を外へ出す出口がないと、通気層を設けた意味がなくなってしまいます。大きさは直径十数センチほどで、洗濯物を干すときにつまずかないよう、ベランダの中心ではなくできるだけ端のほう、動線から外れた位置に取り付けます。ステンレス製なので雨に当たっても錆びません。
Q. ベランダの防水工事はどのくらいの日数がかかりますか?
この事例は3日間でした。清掃・プライマー・自着シート・脱気筒で1日目、立ち上がりのひび割れ補修とウレタン1回目で2日目、ウレタン2回目とトップコートで3日目という流れです。各工程で乾燥時間が必要なため、日数を詰めることはできません。雨天の場合は順延します。面積が広い場合や箇所数が多い場合はその分日数が加わります。
Q. 工事中、ベランダは使えなくなりますか?
工事期間中は洗濯物を干すことができません。材料が乾くまで床に乗れないためです。室外機やプランターなど床に置いてあるものは、事前に移動をお願いしています。移動が難しい大きなものは、こちらで持ち上げて施工することも可能ですので事前にご相談ください。工事が終わり、トップコートが完全に乾けば通常どおりお使いいただけます。
おわりに|「これって放っておいたらダメなやつですよね」への答え
冒頭のお客様のひとことに、あらためてお答えします。
はい、放っておいてはいけないものです。ただし、あの時点で気づいてご連絡をいただいたことは、まったく手遅れではありませんでした。むしろ、雨漏りが始まる前の——いちばん工事が軽くて済み、いちばん費用のかからないタイミングでした。
ベランダの床のひび割れは、「そのうち直そう」と思っているうちに、階下の天井のシミに変わります。シミになってしまえば、防水工事に加えて内装の補修が要ります。ひび割れのうちなら、3日間で終わります。
東大阪市をはじめ、大阪市平野区・八尾市・松原市など私たちの施工エリアで「ベランダの床がひび割れている」「下の階の天井にシミが出てきた」「ベランダが複数あるけれど、どこから手を付けるべきか分からない」といったお悩みがありましたら、まずは写真を1枚お送りください。見せていただければ、密着工法で足りるのか通気緩衝工法が必要なのか、おおよその見当をお伝えできます。
そして、いま工事の予定がない方にも、ひとつだけ覚えて帰っていただきたいことがあります。ベランダの防水は、トップコートを5年前後で塗り直すだけで寿命が大きく変わります。まだひび割れていないベランダをお持ちなら、それがいちばん安い防水対策です。
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