東大阪市北石切町|築35年モルタル外壁のひび割れをUカット補修|3通りの下地処理と参考価格


「自分で埋められるところは、もう全部やってしまったんです」
東大阪市北石切町。築35年のモルタル外壁のお宅から最初にいただいたご相談は、この一言でした。外壁には大きなひび割れが何本も走り、その多くにはすでに市販の補修材が詰められていました。手の届く高さは、お客様ご自身が何年もかけて手当てしてこられたのです。
それでも、脚立では届かない2階の壁と、深く割れてしまった箇所だけはどうにもならない。「ここから先は、さすがに無理でした」——そうおっしゃったのが、私たちが呼ばれた理由でした。
19日後。足場が外れた朝、お客様は道の向かい側まで下がってご自宅を見上げ、しばらく黙ったあとに「割れていた場所が、どこだったか分からなくなりましたね」と笑われました。
この記事は、その19日間の記録です。ひび割れの幅と深さで補修方法を3通りに分け、深い割れにはUカット工法、浮いた箇所には斫り(はつり)で対応しました。同等の内容を現在の価格でお見積りすると154万円前後になります。
現地調査で何を見て、どのひび割れにどの処置を選んだのか。下地補修から仕上げまでの全工程を22枚の写真で公開します。
工事データ
| 施工エリア | 大阪府東大阪市北石切町 |
|---|---|
| 築年数 | 35年 |
| 建物 | 2階建て戸建て/モルタル外壁(リシン吹付)+木部あり |
| 施工内容 | 外壁塗装/ひび割れ補修(斫り・Uカット・フィラー刷り込み)/木部塗装/雨戸塗装 |
| 使用塗料 | 外壁:KFシェアルドSi(KFケミカル/水性1液シリコン) 下塗り:水性カチオンシーラー+アンダーフィラー弾性エクセル(日本ペイント) 木部:キシラデコール(大阪ガスケミカル) |
| 工期 | 19日間 |
| 保証 | 5年 |
| 参考価格 | 154万円前後(同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安です) |
※参考価格は、この工事と同じ内容・同じ規模の工事を、現在の材料費・人件費でお見積りした場合の目安金額です。実際の金額は建物の大きさ、足場の架け方、下地補修の量によって変わります。
「高いところだけは、どうしても届かなくて」ご相談のきっかけ
お問い合わせの時点で、お客様はご自宅の状態をよく把握されていました。築35年のあいだに外壁のあちこちが割れ、そのたびにホームセンターで買った補修材を詰めてきた。ひび割れが最初に目立ち始めたのは阪神淡路大震災の後だったと伺いました。そこから約30年、増えていくひび割れと付き合ってこられたわけです。
ただ、ご自身で手を入れられるのは1階の手の届く範囲まで。2階の壁、庇の上、下屋のまわりは脚立をかけても届きません。そして何より、ご本人が気にされていたのは「詰めても、また同じ場所が割れてくる」ことでした。
これは非常によくあるご相談です。市販の補修材を表面に詰めるだけでは、割れの奥までは埋まりません。外壁は日中に温められて伸び、夜に冷えて縮みます。その動きに表面の補修材だけがついていけず、同じ線に沿ってまた口が開いてしまう。ひび割れの補修は「詰める」ことより「どこまで割れているかを見極めて、それに合った処置を選ぶ」ことが本質です。
現地調査|モルタル外壁のひび割れは何mmから危険?

調査に伺って最初に感じたのは、ひび割れの「本数」よりも「性格の違い」でした。同じ壁の中に、髪の毛のように細い線と、指の爪が入るほど口の開いた割れが混在していたのです。これを一律に同じ方法で埋めてしまうと、必ずどこかが早期に再発します。
ひび割れは幅で危険度が変わります

- 幅0.3mm未満(ヘアークラック)|塗膜やモルタル表層だけの浅い割れ。雨水はほとんど入りませんが、放置すると口が広がっていきます。下地調整材の刷り込みで対応できます。
- 幅0.3〜0.5mm程度|表層より少し深い割れ。風を伴う雨のときに水が入り始める領域です。今回はこの範囲まで、専用のフィラーを刷り込む方法で処置しました。
- 幅0.5mm以上・深さのある割れ(構造クラック)|モルタルの厚み方向に貫通している可能性がある割れです。雨水が内部の下地木材やラス網まで届き、腐食やサビの原因になります。ここがUカット工法の出番です。
- 欠け・浮きを伴う箇所|幅の問題ではなく、モルタルそのものが下地から離れている状態。叩くと「ポンポン」と軽い音がします。埋めるのではなく、いったん壊して作り直します。
現場では、割れの幅をクラックスケールで確認しながら、周囲を打診棒で叩いて浮きの有無を確かめていきます。幅が細くても、周囲が浮いていれば処置は変わります。「何mmか」と「浮いているか」の2つで、補修方法を決めます。
ひび割れを放置するとどうなる?

モルタル外壁のひび割れが怖いのは、割れそのものではなく、そこから入った水の行き先です。モルタルの裏側には、ラス網と呼ばれる金網と、それを支える木材の下地があります。割れから染み込んだ水は、この金網をサビさせ、木材を湿らせます。金網がサビて膨らめばモルタルは内側から押されてさらに割れ、木材が湿れば腐朽が進み、最終的には壁を作り直すしかなくなります。
怖いのは、室内に雨漏りとして現れるまで数年から十数年かかることです。天井にシミが出た時点では、すでに下地の傷みは相当進んでいます。ひび割れは、症状ではなく「入口」です。入口のうちに塞いでおけば、費用は塗装工事の中に収まります。
ひび割れの原因は一つに特定できないことがほとんどです。経年によるモルタルの収縮、地震の揺れ、前面道路をトラックが通る振動、建物の乾燥収縮。これらが重なって発生します。原因を突き止めることより、いま開いている入口をどう塞ぐかのほうが実務上は重要です。
Uカット工法とは?浅いひび割れとの処置の違い


Uカット工法とは、ひび割れの線に沿って専用の刃で溝を掘り、U字型の受け皿を作ってから充填材を詰める補修方法です。カット部分は先にV字状に刃を入れ、さらに削り広げてU字の断面に仕上げます。
なぜわざわざ壁を削るのか。理由は充填材の「厚み」です。
細い割れにそのまま材料を流し込んでも、入るのは表面のごく薄い層だけ。薄い膜は建物の伸縮についていけず、すぐに切れます。一方、U字に削れば数mmの深さと幅が確保でき、そこに詰めたシーリング材が伸び縮みを吸収するクッションとして働きます。Uカットは「割れを埋める」工法ではなく、「動きを逃がす目地を後から作る」工法だと考えると分かりやすいです。
浅いひび割れとの処置の違い

| 状態 | 処置 | 考え方 |
|---|---|---|
| 幅0.5mm以下の浅い割れ | ブラシ清掃+フィラー刷り込み | 下塗り材で塞げる範囲。削らず表層で処理 |
| 幅が広く深い割れ | Uカット+シーリング+樹脂モルタル | 溝を作って充填材に厚みを持たせ、再発を防ぐ |
| 欠け・周囲が浮いている | 斫り+モルタル充填 | 弱い部分を撤去してから作り直す |
斫り(はつり)とはどんな作業か
斫りとは、傷んで浮いたモルタルをハンマーなどで叩き落として撤去する作業です。「壊す」工程なので、初めてご覧になるお客様は驚かれることがあります。けれど、これをやらずに塗装をすると何が起きるか。塗料は健全な下地に密着しますが、その下地自体が浮いていれば、塗膜ごと下地が剥がれ落ちてきます。塗料の性能とは関係のないところで、工事が失敗するのです。
叩いて音を確かめ、弱い範囲がなくなるまで落とす。健全な部分に当たると音が変わるので、そこが撤去の終点です。弱い下地を残したまま上から塗る誘惑を断ち切ることが、下地補修でいちばん大事な判断だと考えています。
施工の全工程|3通りの下地補修から仕上げまで
工程1|欠けて浮いた箇所を斫り、モルタルで作り直す

打診して確かめると、欠けた部分の周りまで広く浮いていました。ここは埋める補修では持ちません。

撤去したあとは、細かな粉やゴミをきれいに払います。ここに粉が残ると、新しく詰めるモルタルが密着しません。清掃が終わったら、モルタル用のプライマーを塗布します。プライマーは接着剤の役割で、既存の下地と新しいモルタルを一体化させるために不可欠です。

充填したモルタルは、コテで周囲の壁と段差が出ないよう平らに均します。仕上げ塗装をすると、この面の凹凸はそのまま影として出てしまうためです。
工程2|深い割れをUカットして塞ぐ


削り終えたら溝の中を清掃し、シーリング用のプライマーを塗ります。溝の内壁は削ったばかりの粉が残っているので、これを残すとシーリングが接着しません。


シーリングが硬化したら、その上から今度はモルタル用のプライマーを塗り、樹脂モルタルを充填して壁面と面一に仕上げます。柔らかいシーリングを内側に、硬い樹脂モルタルを外側に。この二層構造にすることで、動きは内側のシーリングが吸収し、表面は周囲のモルタルと同じ質感に戻ります。


工程3|幅0.5mm以下の細い割れはフィラーを刷り込む

細い割れは、まずワイヤーブラシで割れの周辺を清掃します。割れの縁が脆くなっていることが多く、そのまま塗るとあとから縁が欠けてくるためです。そのうえで下地補修用のフィラーをヘラで刷り込み、隙間を埋めていきます。この幅の割れをわざわざUカットする必要はありません。過剰な処置は壁を弱らせるだけで、コストにも工期にも跳ね返ります。
工程4|高圧洗浄

下地補修が済んだら高圧洗浄です。このお宅の外壁は新築時にリシン(砂の粒が入った吹付材)で仕上げられており、触ると砂がポロポロと落ちる状態でした。洗浄で落ちるものは、この段階でしっかり落としきります。洗い残したほこりや粉の上に塗料をのせても、塗膜はその粉ごと剥がれます。
工程5|木部をキシラデコールで塗装
このお宅は1階の下屋部分に木材が使われていました。木目が見える意匠は風情がある反面、外気にさらされ続けると必ず傷みます。木部には木部専用の塗料として、大阪ガスケミカルのキシラデコールを選びました。木の呼吸を止めずに内部へ浸透して保護するタイプで、木目を塗りつぶさずに残せるのが理由です。色は「ひのき」を選択しました。

キシラデコールは1回塗っただけではほとんど見た目が変わりません。乾燥させてから2回目を重ねることで、色が定着し保護性能が出ます。木製の門扉も同じ仕様で塗り替えました。

工程6|下塗り2回(カチオンシーラー+弾性フィラー)
今回の塗装で最も気を遣ったのが下塗りです。前述のとおり外壁表面のリシンが砂状に崩れていたため、まず崩れる表面を固めてから、その上に塗装するという二段構えが必要でした。

カチオンシーラーは無色ですが、壁が吸い込むため塗った箇所は色が濃く見えます。この色の変化が、吸い込みムラを確認する目安にもなります。

2回目はアンダーフィラー弾性エクセル。接着剤の役割に加え、細かな凹凸やヘアークラックを埋めて面を整えます。塗ると外壁全体が白くなります。下地補修した箇所には、周囲と質感を揃えるためにパターンの吹き戻しも行いました。
工程7|上塗り2回(KFシェアルドSi)
仕上げの主剤はKFケミカルのKFシェアルドSi。水性1液のシリコン塗料です。ここまででカチオンシーラー→フィラー→中塗り→上塗りの計4回、塗り重ねたことになります。一般的な3回塗りより1工程多いのは、崩れる下地を固める必要があったためです。


中塗りと上塗りは同じ材料・同じ色です。色が変わらないぶん塗り漏れが見えにくいので、面ごとに区切って、境目を残さないよう順序を決めて進めます。
工程8|雨戸の塗装
付帯部については、このお宅は雨樋や水切りの多くが銅とステンレスでした。銅・ステンレス・アルミは塗料が食いつきにくく、塗ってもすぐ捲れてきます。無理に塗るとかえって見た目を損なうため、塗装しないという判断をしました。塗るべき付帯部は雨戸です。
雨戸はまずケレンで表面のサビやざらつきを均します。この一手間の有無で仕上がりが大きく変わります。塗装は刷毛ではなくエアレスによる吹付です。雨戸は面が平らで刷毛の跡が残りやすく、吹付のほうがはるかに均一に仕上がるためです。乾燥を挟んで2回吹き付け、レールに戻して完了です。

東大阪市北石切町という土地とモルタル外壁

北石切町は東大阪市の東側、生駒山の麓に広がるエリアです。石切劔箭神社の参道周辺から山手に向かって住宅が並び、斜面地に沿って家が建っているため、道路から見上げる位置に外壁がある家が少なくありません。
この地域を回っていて感じるのは、築30年を超えるモルタル外壁のお宅が多いことです。サイディングが普及する前に建てられた住宅が多く残っており、今回のお宅もその一軒でした。モルタル外壁は継ぎ目のない一枚壁として仕上がる美しさがある一方で、構造上、必ずひび割れが出ます。これは施工の良し悪しではなく、材料の性質です。
加えて山麓という立地は、朝夕に霧や湿気が滞留しやすく、北面や樹木の陰になる面は乾きにくい傾向があります。ひび割れから入った水が抜けにくい条件が揃っているとも言えます。東大阪市の山手側でモルタル外壁のお宅にお住まいなら、ひび割れは「そのうち」ではなく「気づいた時期」に手を打つことをおすすめします。
また、坂道や狭い道が多く、足場を組む段取りや資材の搬入経路を事前に確認しておく必要のある地域でもあります。現地調査ではお家の状態と一緒に、道路の幅や隣地との距離も見せていただいています。
完工の日
着工から19日目。足場の解体が終わり、養生シートが外れました。
お客様は道路の向かい側まで下がって、壁を端から端まで目で追われていました。長いあいだ気にされてきた場所ほど、真っ先に確認されるものです。そして「どこが割れていたか、分からなくなりましたね」と言われました。
ご自身で30年近く補修を続けてこられた壁です。その手当てがあったからこそ、雨水の侵入が最小限で済み、今回も塗装工事の範囲内で収めることができました。お客様が続けてこられた応急処置は、決して無駄ではありませんでした。そのことをお伝えできたのが、この現場でいちばん嬉しかったことです。
よくあるご質問
Q. モルタル外壁のひび割れは何mmから補修が必要ですか?
目安は0.3mmです。0.3mm未満のヘアークラックは表層だけの浅い割れで、塗り替えの際の下地調整材(フィラー)で塞げます。0.3〜0.5mmは次の塗り替えまでに広がる可能性があるため、塗装時に必ず処置します。0.5mmを超えて深さのある割れは、Uカット工法で溝を作って充填する処置が必要です。ただし幅だけでは判断できません。細くても周囲が浮いていれば斫って作り直します。
Q. Uカット工法は必ず必要ですか?費用は上がりますか?
深く割れている箇所にだけ必要です。すべてのひび割れをUカットする必要はありませんし、そうすべきでもありません。浅い割れまで削れば壁を無用に傷めるだけです。費用はカットする延長(メートル数)で加算されるため、深い割れが多いお宅ほど下地補修費は増えます。お見積り時に「どの割れをUカットし、どの割れをフィラーで処置するか」を分けてご説明します。
Q. 自分でコーキングを詰めた箇所はどうなりますか?
状態を見て判断します。しっかり接着していて痩せていなければ、上から下地調整をして塗装できます。逆に浮いている、痩せて隙間が空いている、割れが再発している場合は、いったん撤去してから正しい手順で詰め直します。この事例でもご自身で補修された箇所が多数ありましたが、そのおかげで雨水の侵入が抑えられており、下地の傷みは最小限で済んでいました。
Q. 築35年のモルタル外壁でも塗装で直りますか?
下地が健全なら塗装で対応できます。この事例は築35年でしたが、ひび割れ補修と4回塗りで仕上げられました。判断の分かれ目は、雨漏りが室内まで出ているか、モルタルの裏の木下地が腐っていないかです。すでに下地が腐朽している場合は、塗装ではなく壁の張り替えや重ね張りが必要になります。現地調査で打診と含水の確認を行い、塗装で足りるかどうかを正直にお伝えします。
Q. モルタル外壁のひび割れ補修と塗装で154万円前後は妥当ですか?
この金額には足場、3通りの下地補修(斫り・Uカット・フィラー)、高圧洗浄、外壁の4回塗り、木部のキシラデコール2回塗り、雨戸の吹付塗装が含まれています。東大阪市で外壁塗装のみ・下地補修が少ない場合は90〜120万円前後が目安ですが、ひび割れが多いお宅では下地補修の手間がそのまま加算されます。金額そのものより、見積書に下地補修の内訳が書かれているかどうかで判断してください。
ひび割れは、埋める前に見極める

「自分で埋められるところは、もう全部やってしまった」——最初のご相談のこの言葉が、この工事のすべてを表していました。
お客様が30年かけて手当てしてきた壁に、私たちが加えたのは「どこまで割れているかを見極めて、それぞれに合った処置をする」という一手間だけです。欠けて浮いた箇所は壊して作り直し、深い割れはUカットして動きを逃がす目地を作り、細い割れはフィラーで塞ぐ。3通りに分けたのは、同じ壁の中に、まったく性格の違うひび割れが混在していたからです。
もしいま、ご自宅のモルタル外壁のひび割れが気になっているなら、まず幅を見てください。そして、割れの周りを軽く叩いてみてください。音が軽ければ、それは埋めるだけでは済まないサインです。判断に迷われたら、写真を送っていただくだけでも状態の見当はつきます。ひび割れが「入口」のうちなら、まだ塗装工事の範囲で終われます。
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