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施工事例紹介

羽曳野市|築16年の外壁に生えた苔を洗浄+塗り替えでリセット|再発を抑える下地と塗料選び

BEFORE 施工前
塗り替え前の外壁全景(築16年)
AFTER 施工後
塗り替え後の外壁全景(グレーと薄ピンクのツートン)


塗り替え前の外壁全景(築16年)
塗り替え前の外壁全景(築16年)
外壁の下部に広がった緑色の苔(寄り)
縦樋の脇から広がる緑色の帯。触れるとしっとりと湿っていて、指先に緑がつきます
庇の上端に溜まった汚れと劣化した塗膜
庇の上端のように水が滞りやすい場所は、汚れも苔も出やすい場所です
経年で劣化した外壁表面の塗膜(寄り)
表面の塗膜が薄くなり、素地の粒立ちがはっきり見えるようになっていました
外壁の継ぎ目に生じたシーリングのひび割れ
継ぎ目のシーリングに細かなひび割れ。ここから入った水分は、壁の中で逃げ場を失います
シーリング補修前に継ぎ目へプライマーを塗布する作業
新しいシーリング材をしっかり密着させるため、先にプライマーを塗ります
専用のガンで継ぎ目に新しいシーリング材を充填する作業
専用のガンで隙間なく充填し、この後ヘラで押さえて仕上げます
補修が終わった外壁の継ぎ目と換気フード周り
補修後。継ぎ目と設備まわりをぐるりと一周させ、水の入り口をふさぎます
現場に設置した高圧洗浄機
エンジン式の高圧洗浄機。大きな音が出るため、事前にご近所へご挨拶をしてから始めます
高圧洗浄で外壁の苔と汚れを洗い流す様子
水をあてた部分だけ、色が一段明るくなります。落ちているのは苔と表面の汚れです
外壁全体を高圧洗浄している様子
上から下へ、面ごとに区切りながら洗い進めます
玄関前アプローチタイルの高圧洗浄(洗浄前後の差)
ご要望でアプローチのタイルも洗浄しました。洗った部分とまだの部分で、はっきり差が出ています
傷みの大きい面にシーラーを塗る作業
特にもろくなっていた面には、先にシーラーを入れて素地を固めます
下地調整に使用したアンダーフィラー弾性エクセルの缶
下地調整には日本ペイントのアンダーフィラー弾性エクセルを使用しました
ローラーでフィラーを塗り付けている様子
白いフィラーを厚めに塗り付け、細かなひび割れを埋めながら面を整えます
フィラーを塗り終えて白くなった外壁
フィラーが乾くと、外壁はいったんまっさらな白になります
使用したスーパーラジカルシリコンGHの缶
仕上げ材はアステックペイントのスーパーラジカルシリコンGHです
外壁に中塗りを行っている様子
中塗りから仕上げの色が入ります
外壁の上塗りを行っている様子
中塗りをしっかり乾かしてから、同じ材料で上塗り。膜の厚みを確保します
雨樋をローラーで塗装している様子
外壁が仕上がったら付帯部へ。樋は2回塗り重ねて仕上げます
塗装を終えた雨樋と破風板
付帯部まで塗り終えると、建物全体が引き締まって見えます
塗り替え後の外壁全景(グレーと薄ピンクのツートン)
塗り替え後の外壁全景(グレーと薄ピンクのツートン)

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「毎年、この面だけ緑になるんです」

羽曳野市にお住まいのお客様から、最初にいただいた言葉です。裏のお宅が足場を組んで塗り替えをされたのを見て、そろそろうちも考えないと、と思われたのがきっかけでのご相談でした。ただ、実際にお話を伺うと、気にされていたのは色あせよりも、建物の決まった面にだけ毎年出てくる緑色の汚れのほうでした。

外壁の苔は、出たからといってすぐに家が傷むようなものではありません。ただ、そこに苔が育っているという事実は、その壁が乾きにくくなっていることを示すサインでもあります。この記事では、築16年のお住まいで苔が実際にどこへどう広がっていたのか、洗って落ちたのか、なぜ洗浄だけでなく塗り替えまで必要だったのかを、工程写真とあわせて最後までお見せします。あわせて、塗り替えたあとに苔とどう付き合っていくのかも、正直なところをお伝えします。

外壁の下部に広がった緑色の苔(寄り)
縦樋の脇から広がる緑色の帯。触れるとしっとりと湿っていて、指先に緑がつきます

工事の基本情報

施工エリア 大阪府羽曳野市
築年数 16年
外壁材 パワーボード(ALCパネル)
ご相談内容 建物の決まった面に毎年苔が出る/外壁表面の塗膜の劣化
施工内容 外壁塗装(3回塗り)/継ぎ目・サッシまわりのシーリング補修/高圧洗浄/付帯部塗装(雨樋・破風板ほか)/玄関前アプローチ・土間の洗浄
使用材料 仕上げ:スーパーラジカルシリコンGH(アステックペイント)/下地調整:アンダーフィラー弾性エクセル(日本ペイント)/傷みの大きい面にシーラー
配色 グレー+薄ピンクのツートン
工期 18日間
参考価格 138万円前後(税込)
保証 5年

※参考価格は、同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安です。外壁の面積・下地の状態・足場の条件によって変わりますので、実際の金額は現地調査のうえでお出しします。

外壁の苔は、どこに出ていた?

外壁の苔が北面、日陰、植栽の近く、水が乾きにくい面に出やすいことを示した図解
苔は、湿気が残る面から広がります

現地調査でまず確認したのは、苔がどの面に出ているかでした。外壁の汚れは、家全体に均一に広がることのほうがまれです。どこに出て、どこに出ていないかを見比べると、その家の水と風の流れが見えてきます。

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道路から見える正面は、思っていたよりもきれいでした。日中しっかり陽が当たり、風も抜ける面です。一方で、隣家との間に入って北側と裏手にまわると、様子がまったく違いました。壁の下のほう、それから縦樋の脇に沿って、緑色の帯がはっきりと立ち上がっていたのです。

手で触れると、乾いた粉ではなく、しっとりと湿った感触がありました。指先には緑がつきます。これは表面についただけの砂ぼこりではなく、そこで生きて増えているもの、つまり苔や藻のたぐいです。

なぜ、同じ面ばかりに生えるのか

苔や藻は植物の仲間で、光と水があれば増えていきます。とはいえ直射日光がガンガン当たる場所より、弱い光でも湿り気が保たれている場所のほうが、はるかに居心地がよいとされています。だから外壁では、次のような条件が重なった面に集まりやすくなります。

  • 北面や、建物の影になる面——陽が当たる時間が短く、朝露や雨で濡れたあと、壁が乾くまでに時間がかかります
  • 隣家との距離が近い面——住宅が密集していると、日照だけでなく風も遮られます。風が抜けないと、壁の表面はいつまでも湿ったままです
  • 植栽や生垣が壁に近い場所——葉が水分を抱え、地面からの湿気も上がってきます。土に近い壁の足元が緑になりやすいのはこのためです
  • 水が流れ落ちる筋や、水が溜まる場所——縦樋の脇、庇の上端、基礎との取り合いなど、水の通り道と滞留点は決まっています
  • 水はけの悪い外構——壁の足元に水が残る、地面がいつも湿っているといった条件も影響します
庇の上端に溜まった汚れと劣化した塗膜
庇の上端のように水が滞りやすい場所は、汚れも苔も出やすい場所です

今回のお住まいは、この条件が北面と裏手にきれいに重なっていました。隣家との間隔が狭く、風が通りにくい。そのうえ足元には植栽があり、地面からの湿気も上がってくる。逆に言えば、正面だけを見て「うちはまだ大丈夫」と判断すると、いちばん傷んでいる面を見落とすことになります。

羽曳野市は市域の東側に丘陵地が広がり、区画にゆとりのある住宅地では庭木や生垣を楽しまれているお宅も多く見られます。緑の多い環境は暮らしとしては気持ちのよいものですが、外壁にとっては湿気を抱えやすい条件でもある、という面は否めません。もちろん、地形や植栽だけで苔の出方が決まるわけではないので、最後は一軒ごとに現地で確かめるしかありません。

緑色の汚れ、黒い汚れ——苔と藻とカビは何が違う?

苔、藻、カビの見た目の違いを外壁の汚れで比較した図解
見た目が似ていても、原因は湿気と日当たりにあります

ひとくちに「苔が生えた」と言っても、壁についているものは一種類ではありません。厳密な分類は専門の領域になりますが、現場で見分ける目安としては、次のように整理しておくと分かりやすいと思います。

  • ——盛り上がってふかふかした質感になり、乾くと茶色っぽく、濡れると濃い緑になります。壁の足元や、水が滞留する場所に出やすい
  • ——盛り上がらず、壁の表面を薄く緑色に染めたように広がります。北面や日陰の広い面が全体的に緑がかって見えるのは、こちらであることが多い
  • カビ——黒や灰色の斑点として出ます。緑ではないので気づきにくく、「なんとなく壁がくすんできた」と感じる原因になっていることがあります

いずれも湿った環境を好むという点では共通していて、対策の方向も同じです。壁を乾きやすい状態に戻すこと。塗料に防藻・防カビ性が付与されているのも、この三つがまとめて同じ条件で増えるからです。ですので、ご相談の際に「苔か藻かカビか」を正確に見分けていただく必要はありません。色がついている・広がっている・毎年同じ場所に出る——この3点だけ押さえていただければ十分です。

苔は、見た目だけの問題なのか

「見た目が悪いだけなら、我慢すればいい」——そう考えられる方は少なくありません。実際、苔が出た瞬間に構造が傷むわけではありませんから、その感覚は間違ってはいないと思います。

ただ、苔にはひとつやっかいな性質があります。水を抱え込むのです。スポンジのように水分を保持するので、苔が広がった面は、雨がやんだあとも長いあいだ濡れたままになります。壁が濡れている時間が長くなるほど、その面はさらに苔が育ちやすい環境になり、同時に塗膜や下地にとっては負担が続くことになります。

つまり苔は、湿っている場所に出る結果であると同時に、その場所をさらに湿らせる原因にもなります。放置すると面積が広がっていくのは、この繰り返しがあるからです。冬に凍結と融解を繰り返す地域ほど影響が大きいとされますが、大阪の平野部でも、常に湿った状態が続くこと自体が劣化を早める方向に働きます。

塗膜のほうも、限界に近づいていた

苔と並んで気になったのが、外壁表面の塗膜でした。このお住まいの外壁はパワーボード(ALCパネル)で、新築時に表面へ吹き付けの仕上げがされています。築16年を経て、その膜が全体に薄くなり、素地の粒立ちがはっきり見えるようになっていました。特に陽当たりのよい東面では、めくれ上がりそうな箇所も見つかりました。

経年で劣化した外壁表面の塗膜(寄り)
表面の塗膜が薄くなり、素地の粒立ちがはっきり見えるようになっていました

塗膜には、外壁の表面で水をはじく役割があります。この膜が痩せてくると、壁は水分を吸いやすく、そして手放しにくくなります。日当たりの悪い面で苔が急に増えるのは、たいていこのタイミングです。苔が広がりはじめた時期と、塗膜が寿命を迎えた時期は、多くの場合ぴったり重なります。

継ぎ目のひび割れも見つかりました

もう一点、外壁同士の継ぎ目とサッシまわりのシーリングにも、細かなひび割れが出ていました。シーリングは、板と板のすきまを埋めて、壁の内側に水や湿気を入れないためのゴム状の部材です。これも年数とともに弾力を失い、やせて割れていきます。

外壁の継ぎ目に生じたシーリングのひび割れ
継ぎ目のシーリングに細かなひび割れ。ここから入った水分は、壁の中で逃げ場を失います

ひび割れた継ぎ目から入った水は、壁の中で行き場をなくします。表からは見えないところで湿気が残り続けるわけですから、これも壁が乾きにくくなる原因のひとつです。目視ではっきり分かるところまで割れていたので、塗装と同時に補修することにしました。

苔は洗えば落ちる?——洗浄で済む段階と、塗り替えが必要な段階

外壁の苔が洗浄で済む段階と塗り替えを検討する段階を比較した図解
苔を落とすだけでなく、防水の膜を戻すかを見ます

ご相談の中でいちばん多いのが、この質問です。答えを先に書くと、苔そのものは、たいてい洗えば落ちます。ただし「落ちる」と「解決する」は別の話です。この境界を、できるだけはっきり書いてみます。

洗浄で十分な段階

次のような状態であれば、洗って様子を見る判断は十分にありえます。

  • 苔が出ているのが一部分だけで、面全体には広がっていない
  • 外壁の表面を手でこすっても、白い粉(チョーキング)がほとんど付かない
  • 前回の塗り替えから、まだ年数が浅い
  • 継ぎ目のシーリングに、ひび割れや隙間が出ていない

この段階なら、塗膜の防水性はまだ残っています。苔を落として壁を乾く状態に戻せば、しばらくは持ちこたえます。無理に塗り替えを勧めるべき状況ではありません。

塗り替えまで踏み込んだほうがいい段階

一方、次のような状態が重なっているときは、洗浄だけでは同じことの繰り返しになりがちです。

  • 苔が面で広がっていて、毎年同じ場所に出てくる
  • 手でこすると白い粉が付く(塗膜が粉状に劣化している)
  • 塗膜が薄くなり、素地の質感が透けて見える
  • 継ぎ目やサッシまわりのシーリングが割れている
  • 前回の塗り替えから10年以上が経っている

ご自宅で確かめる方法

特別な道具は要りません。晴れて乾いた日に、外壁を手のひらで軽くこすってみてください。手に白い粉がはっきり付くようなら、表面の塗膜が粉になって浮いている状態です。あわせて、苔が出ている面を雨上がりの翌日に見に行ってみてください。ほかの面が乾いているのにそこだけ黒っぽく湿っているなら、その面は水を抱えたままになっています。

この2つが揃っていたら、洗浄だけで終わらせず、塗膜そのものをつくり直す段階に来ていると考えたほうが現実的です。

市販の洗浄剤や高圧洗浄機で、自分で落とせますか

やってやれないことはありません。ただし、おすすめする前にお伝えしておきたいリスクがいくつかあります。

ひとつめは、高圧洗浄機の圧力です。家庭用のものでも、近距離で当てれば劣化した塗膜をめくり上げてしまうことがあります。もともと弱っている面ほど剥がれやすく、「苔を落とすつもりが塗膜まで落ちてしまった」という状態になりかねません。シーリングも同様で、硬くなった目地に強い水流を当てると、割れを広げてしまうことがあります。ノズルを壁から離す、当てる角度をつける、といった加減が必要です。

ふたつめは、高所作業の危険です。苔は壁の足元だけでなく、2階の北面や庇まわりにも出ます。脚立に乗って手を伸ばした状態で、反動のある高圧洗浄機のガンを扱うのは、率直に言って危険です。転落事故は、この「あと少しだけ届かない」場面で起きます。

みっつめは、洗浄剤の扱いです。外壁用の洗浄剤には、塩素系をはじめ強い成分を含むものがあります。使う場合は必ず製品の注意書きに従い、周囲の植栽や近隣への飛散、目や皮膚への付着に気をつけてください。壁の材質によっては変色を招くこともあるため、目立たない場所で試してからのほうが安全です。

手の届く範囲を、水と柔らかいブラシでやさしく洗う。この程度にとどめておくのが、いちばん無難だと思います。

高圧洗浄だけでは、なぜ再発するのか

ここが今回の記事でいちばんお伝えしたいところです。

高圧洗浄は、苔や藻、汚れ、そして浮きかけた古い塗膜を落とす作業です。洗い上がりは驚くほどきれいになりますし、塗装工事では欠かせない下準備でもあります。ただし洗浄でできるのは、今そこにあるものを取り除くことだけです。

苔が生えていた理由——日が当たらない、風が抜けない、壁が乾かない——は、洗っても何ひとつ変わりません。壁の表面が水を吸いやすいままなら、次の雨で同じ状態に戻ります。半年から一年ほどできれいさを保てても、条件が同じである以上、また同じ面から出てきます。「去年洗ってもらったのに、もう緑になった」というご相談をいただくのは、この構造があるからです。

再発の間隔をのばすには、洗ったあとの壁を、水を抱えにくい状態に戻す必要があります。それが塗り替えの役割です。表面に新しい膜をつくって水をはじかせ、濡れても早く乾く壁に戻す。苔対策として塗装を行う意味は、色をきれいにすることよりも、むしろこちらにあります。

「苔の面だけ塗る」ことはできますか

時々いただくご質問です。技術的にはできますし、実際にご希望があれば対応もします。ただ、あまりおすすめはしていません。理由は2つあります。

ひとつは、費用の内訳の問題です。外壁塗装の費用のうち、足場の設置と解体、養生、高圧洗浄といった準備の工程は、塗る面積が半分になっても半分にはなりません。一面だけを塗ると、面積あたりの単価はどうしても割高になります。

もうひとつは、塗り分けた面の境目です。新しく塗った面と、そのままの面では、色つやの差がはっきり出ます。数年後に残りの面を塗るとなると、そのときにまた足場が必要です。結果として、二度に分けたほうが総額では高くつくことが少なくありません。

苔が出ている面だけが極端に傷んでいて、ほかの面はまだ十分に持つ——そう判断できる状況であれば部分施工にも意味がありますが、築15年前後で苔が面で広がっている場合、たいてい他の面も同じくらい年数を重ねています。今回のお住まいも、北面だけでなく東面の塗膜が限界に近づいていました。

工事の記録①|まず、継ぎ目を直す

着工してまず取りかかったのは、継ぎ目のシーリング補修でした。塗装より先です。

パワーボードの外壁は、パネルを組み合わせて構成されているぶん、シーリングの総延長が長くなります。今回も3日間かけての作業になりました。ここを飛ばして塗ってしまう業者もありますが、割れた継ぎ目の上から塗料をのせても、割れは塗膜ごと動いてまた開きます。水の入り口をふさがないまま表面だけ整えるのは、順番が逆です。

シーリング補修前に継ぎ目へプライマーを塗布する作業
新しいシーリング材をしっかり密着させるため、先にプライマーを塗ります

まず、下地と新しいシーリング材の密着をよくするためのプライマーを塗ります。サッシまわりは、仕上がりのラインをまっすぐ出すためにマスキングテープを先に貼っておきます。地味な作業ですが、この一手間が仕上がりの印象を変えます。

専用のガンで継ぎ目に新しいシーリング材を充填する作業
専用のガンで隙間なく充填し、この後ヘラで押さえて仕上げます

専用のガンで、新しいシーリング材を充填していきます。内部に空気が入らないよう気をつけながら、ヘラで押さえて均します。ここは慎重に進める工程です。

補修が終わった外壁の継ぎ目と換気フード周り
補修後。継ぎ目と設備まわりをぐるりと一周させ、水の入り口をふさぎます

継ぎ目だけでなく、換気フードや設備の取り合いまで、水が入りうる場所をひととおり処理しました。ここまでで3日。外から見て派手さのない工程ですが、壁の中に湿気を入れないという意味では、苔対策の一部でもあります。

工事の記録②|高圧洗浄で苔を落とす

現場に設置した高圧洗浄機
エンジン式の高圧洗浄機。大きな音が出るため、事前にご近所へご挨拶をしてから始めます

洗浄はエンジン式の高圧洗浄機で行います。ガソリンを燃やして動くため、それなりの音が出ます。作業前にご近所へご挨拶にうかがい、洗濯物や窓を閉めていただくお願いもあわせてお伝えしています。

高圧洗浄で外壁の苔と汚れを洗い流す様子
水をあてた部分だけ、色が一段明るくなります。落ちているのは苔と表面の汚れです

水をあてると、その部分だけ色が一段明るくなります。落ちているのは苔と、その上に積もっていた汚れです。境目がくっきり出るので、いかに壁が汚れていたかが分かりやすい工程でもあります。

外壁全体を高圧洗浄している様子
上から下へ、面ごとに区切りながら洗い進めます

上から下へ、面ごとに区切って洗い進めます。跳ね返りの水しぶきを全身で受けるので、冬場はなかなかこたえる作業です。今回は12月でした。

なお、この日に落とした苔は、あくまで表面に育っていたぶんです。壁が水を吸いやすくなっているという根本の状態は、このあとの塗装工程で手当てすることになります。

玄関前アプローチタイルの高圧洗浄(洗浄前後の差)
ご要望でアプローチのタイルも洗浄しました。洗った部分とまだの部分で、はっきり差が出ています

お客様からのご希望で、玄関前のアプローチタイルと土間も洗浄しました。塗装工事とは直接関係のない部分ですが、長年蓄積した黒ずみがきれいに落ちました。写真は洗った部分とまだの部分の境目です。地面まわりの汚れも、多くは同じ生き物由来のものです。

工事の記録③|3回塗りで、水をはじく膜をつくり直す

外壁塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本です。今回はそこに一手間を加えました。

傷みの大きい面にシーラーを塗る作業
特にもろくなっていた面には、先にシーラーを入れて素地を固めます

正面の一部で表面の塗膜がとくにもろくなっていたため、その範囲には先にシーラーを入れました。もろい素地を固めて、この上に乗る材料が食いつく土台をつくるための工程です。全面に必要な作業ではありませんが、状態の悪い面を放置したまま次に進むと、そこだけ早く傷みます。

下地調整に使用したアンダーフィラー弾性エクセルの缶
下地調整には日本ペイントのアンダーフィラー弾性エクセルを使用しました

続いて下地調整材のフィラーです。日本ペイントのアンダーフィラー弾性エクセルを使用しました。細かなひび割れを埋めながら、塗装に適した面へ整えていきます。

ローラーでフィラーを塗り付けている様子
白いフィラーを厚めに塗り付け、細かなひび割れを埋めながら面を整えます

ローラーで厚めに塗り付けていきます。フィラーは白いので、塗り進むにつれて外壁がどんどん白くなっていきます。

フィラーを塗り終えて白くなった外壁
フィラーが乾くと、外壁はいったんまっさらな白になります

塗り終わると、家全体がいったんまっさらな白に戻ります。ここが仕上がりを左右する下地です。

使用したスーパーラジカルシリコンGHの缶
仕上げ材はアステックペイントのスーパーラジカルシリコンGHです

仕上げ材は、アステックペイントのスーパーラジカルシリコンGHです。この塗料には防藻・防カビ性能が付与されており、苔や藻、カビが表面につきにくくなることが期待されます。今回この材料を選んだのは、まさに苔のご相談だったからです。

ただし、これで苔が二度と出なくなるわけではありません。あくまで再発までの時間をのばす方向に働く、というのが正確な表現です。この点は、あとの章でもう一度触れます。

外壁に中塗りを行っている様子
中塗りから仕上げの色が入ります

中塗りから、仕上げの色が入ります。今回の配色は、下部がグレー、上部が薄いピンク系のツートンです。中塗りの段階で一気に家の表情が変わります。

外壁の上塗りを行っている様子
中塗りをしっかり乾かしてから、同じ材料で上塗り。膜の厚みを確保します

中塗りをしっかり乾かしてから、同じ材料・同じ色で上塗りをします。同じ色をもう一度塗るのは、色をのせるためではなく、膜の厚みを確保するためです。塗料が水をはじく力は、決められた量をきちんと塗って、はじめて設計どおりに発揮されます。ここを薄くすると、数年で壁が水を吸うようになり、また苔が出やすい状態に戻ります。塗り漏れがないよう、面ごとに確認しながら進めました。

工事の記録④|付帯部を塗って仕上げる

雨樋をローラーで塗装している様子
外壁が仕上がったら付帯部へ。樋は2回塗り重ねて仕上げます

外壁が仕上がったら、雨樋や破風板といった付帯部に移ります。小さなローラーでの作業になるため、面積のわりに手間と時間がかかる工程です。

塗装を終えた雨樋と破風板
付帯部まで塗り終えると、建物全体が引き締まって見えます

付帯部も2回塗り重ねて仕上げます。見た目が引き締まるのはもちろんですが、雨樋のように水を受け続ける部材ほど、塗膜で保護しておく意味があります。とくに縦樋の脇は苔が出やすい場所ですから、樋そのものを健全に保っておくことは、間接的な苔対策でもあります。最後にタッチアップと清掃をして、塗装作業は完了です。

18日間の内訳と、5年の保証について

今回の工期は18日間でした。内訳としては、足場の設置、シーリング補修に3日、高圧洗浄と乾燥、養生、外壁の下塗り・中塗り・上塗り、付帯部の2回塗り、そして足場の解体という流れです。冬場の工事だったため、乾燥の待ち時間を長めにとっています。塗料は決められた乾燥時間を守らないと本来の性能が出ないので、ここは天候を見ながら日程を調整しました。

保証は5年でお付けしています。ただし保証の対象は、塗膜のふくれや剥がれといった施工に起因する不具合であって、苔が再び出たことは保証の対象にはなりません。苔は建物の立地条件によって出方が大きく変わるもので、施工の良し悪しだけで決まるものではないからです。ここを曖昧にしたまま「苔も保証します」とお伝えするのは誠実ではないと考えています。

外壁の苔対策|再発を抑えるためにできること

外壁の苔の再発を抑える防藻防カビ塗料、乾燥、植栽距離、点検の対策図
条件の悪い面を知って、早めに見に行くことが大切です

塗り替えが終わったお客様に、いつもお話ししている内容をまとめます。塗料だけで解決する話ではないので、暮らしの側でできることもあわせて書きます。

1.防藻・防カビ性のある塗料を選ぶ

苔が気になる面がある場合、上塗り材にこの性能が付与されているものを選ぶ意味は大きいと考えています。表面に生き物が定着しにくくなるよう設計されているためです。ただしこの効果も永久ではなく、年数とともに弱まっていきます。「一生効く」ものではない、という前提で選んでください。

2.壁が早く乾く条件をつくる

これがいちばん効きます。苔は湿った時間の長さで育つので、乾く時間を短くできれば発生は抑えられます。

  • 壁ぎわに置いた物をどける——自転車、物置、資材などが壁に寄りかかっていると、その裏側は乾きません
  • 地面の水はけを見直す——壁の足元に水たまりができるなら、勾配や砂利敷きの検討も有効です
  • 雨樋の詰まりを直す——樋があふれて壁を伝うと、その筋だけ苔が育ちます

3.植栽と壁のあいだに距離をとる

壁に接するほど近い生垣や庭木は、風の通り道をふさぎ、葉から出る水分で壁ぎわの湿度を上げます。切ってしまう必要はありませんが、壁との間に人が通れるくらいの隙間をあける、伸びた枝を定期的に刈り込む、といった手入れだけでも違いが出ます。庭を楽しみながら壁も守るなら、この距離感が現実的な落としどころです。

4.年に一度、いちばん条件の悪い面を見に行く

手入れというほどのことではありませんが、年に一度でいいので、北側や裏手の壁を見に行く習慣をおすすめしています。普段は誰も通らない面ですから、変化に気づくのが数年遅れる、ということが起こりがちです。

見るのは雨上がりの翌日が向いています。ほかの面が乾いているのにその面だけ黒っぽく湿っていないか、去年より緑の範囲が広がっていないか。薄く出はじめた段階なら、ホースの水とデッキブラシで軽くこするだけでも落ちます。ここで対応できていれば、面全体に広がるまでの時間はかなり稼げます。

5.それでも、完全には防げません

正直に書きます。どんな塗料を塗っても、外壁から苔を完全になくすことはできません。

外壁は屋外にあり、空気中には苔や藻の胞子が常に漂っています。北面がある、隣家が近い、庭がある——こうした条件は塗装では変えられません。塗り替えでできるのは、壁が水を抱える時間を短くして、苔が定着しにくい状態をつくることまでです。条件が厳しい面では、数年で薄く出はじめることもあります。

ですから私たちは、「これで一生きれいです」とはお伝えしません。お伝えするのは、次の2つです。ひとつは、薄く出はじめた段階なら、水をかけてブラシで軽くこする程度で落とせること。もうひとつは、面で広がって毎年同じ場所に戻ってくるようになったら、次の塗り替えを考える時期だということ。この見分けさえ持っておけば、苔に振り回されずに済みます。

塗り替えを終えて

足場を解体した日、お客様が最初におっしゃったのは、色のことではありませんでした。

「あの面が、普通の壁に戻りましたね」

毎年緑になっていた北側の壁が、ほかの面と同じ表情になっている。ご本人にとってはそれがいちばんの変化だったのだと思います。18日間、足場と作業音でご不便をおかけしましたが、気にされていた一点にきちんと届いたのなら、こちらとしても報われる思いです。

外壁の苔は、家の欠陥ではありません。そこに水が留まっているという、建物からの合図です。合図が読めれば、あわてる必要も、放置して悪化させる必要もありません。緑が気になりはじめたら、それは壁が乾きにくくなっているサインかもしれない——まずはそこから確かめてみてください。

よくあるご質問

Q1.外壁の苔は、放っておくとどうなりますか?

苔が出ただけで建物の構造がすぐに傷むことはありません。ただ、苔は水分を抱え込む性質があるため、広がるほど壁が濡れている時間が長くなります。壁が乾かない状態が続くと、そのぶん塗膜や下地への負担が続くことになり、結果として次の塗り替え時期が早まりやすくなります。また、面積が広がってから落とすほど手間もかかります。薄いうちに気づいて対応するのが、いちばん負担の少ないやり方です。

Q2.苔が生えるのは北側だけですか?

北面がいちばん出やすいのは確かですが、北側だけとは限りません。隣家との距離が近くて風が抜けない面、庭木や生垣が壁に接している場所、縦樋の脇や庇の上端のように水が流れたり滞留したりする場所は、方角に関係なく苔が出ます。逆に、北面でも風がよく通って早く乾く条件であれば、ほとんど出ないこともあります。方角そのものより、その面が濡れたあとどれくらいで乾くかで決まると考えてください。

Q3.塗り替えたあと、どのくらいで苔がまた出てきますか?

立地条件によって大きく変わるため、何年とお約束することはできません。日当たりと風通しに恵まれた面なら10年近く気にならないこともありますし、隣家が迫っていて一日中日陰になる面では、数年で薄く出はじめることもあります。防藻・防カビ性のある塗料は再発までの時間をのばす方向に働きますが、苔が出なくなるわけではありません。薄く出た段階で水洗いすれば落とせますので、その付き合い方を前提にお考えいただくのが現実的です。

Q4.苔を落とすのに、市販の洗浄剤は使ったほうがいいですか?

無理に使う必要はありません。薄く出ている段階なら、ホースの水と柔らかいブラシで軽くこするだけでも落ちます。洗浄剤を使う場合は、塩素系など強い成分を含む製品もあるため、必ず注意書きに従い、周囲の植栽への飛散や、目・皮膚への付着に気をつけてください。壁の材質によっては変色を招くこともあるので、目立たない場所で試してからのほうが安全です。なお、脚立での高所作業や家庭用高圧洗浄機の使用は、劣化した塗膜やシーリングを傷めたり転落したりする危険があるため、手の届く範囲にとどめることをおすすめします。

Q5.苔が出ている面だけ洗ってもらうことはできますか?

洗浄のみのご依頼も承っています。ただ、高所の面を洗う場合は足場や高所作業車が必要になるため、洗浄だけでも相応の費用がかかります。前回の塗り替えから年数が浅く、外壁を手でこすっても白い粉が付かない状態であれば、洗浄で様子を見る判断には十分な意味があります。一方、粉が付く・塗膜が薄くなっている・継ぎ目が割れているといった状態が重なっているときは、洗っても同じ面から再発しやすく、足場代を二度払うことになりかねません。どちらが適しているかは、現地を拝見したうえで正直にお伝えします。

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