大東市緑ヶ丘|築18年モルタル外壁をラジカル制御塗料で塗装|ラジカルとシリコンの違い


工事データ
| 施工エリア | 大阪府大東市緑ヶ丘 |
|---|---|
| 築年数 | 18年 |
| 建物 | 戸建て住宅/モルタル下地にリシン吹き付けの外壁 |
| 施工内容 | 外壁塗装(3回塗り)/ひび割れ補修・角欠け補修/リシン模様の吹き戻し/鉄部ケレン・錆止め/付帯部塗装 |
| 使用塗料 | 外壁 下塗り:ホワイトフィラーAII(アステックペイント) 外壁 主剤:スーパーラジカルシリコンGH(アステックペイント) 鉄部 錆止め:1液ハイポンファインデクロ(日本ペイント) |
| 工期 | 21日 |
| 保証 | 5年 |
| 参考価格 | 170万円前後(税込) 同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安です。実際のお見積りは足場面積・下地の状態により変動します。 |
「見積書のこの“ラジカル”って、何ですか」
お客様が見積書を指でなぞりながら、そう聞かれました。指の先には、外壁の主剤として書いた「スーパーラジカルシリコンGH」という塗料名がありました。
「シリコンは聞いたことがあるんです。フッ素も、高いやつでしょう。でもラジカルって、なんだかすごく強そうな名前だけど、シリコンより上ですか、下ですか」
とても素直な質問で、そして、とても多い質問です。じつはこの「上か下か」という聞き方そのものに、ラジカル制御という技術がわかりにくくなっている原因が詰まっています。結論を先に言ってしまうと、ラジカルはシリコンの上でも下でもありません。比べる軸が、そもそも違うのです。
大東市緑ヶ丘の、築18年の戸建て住宅。モルタルの上にリシンを吹き付けた、この年代の大阪の住宅にとても多いつくりのお家です。外壁の側面に入ったひび割れをずっと気にされていて、以前に訪問販売で見積もりを取ったものの金額が高くて見送っていた、というお話でした。
この記事では、その現場でお客様にお話しした内容をそのまま文章にしました。ラジカルとは何か。ラジカル制御型の塗料は塗膜の中で何をしているのか。従来のシリコンと何がどう違い、値段はどれくらい変わるのか。そして、この技術が万能ではない部分はどこなのか。
現地調査|築18年のモルタル外壁に出ていたもの
塗料の話に入る前に、この家に何が起きていたかを先に書きます。塗料の選定は、あくまで下地の状態を見たあとの話だからです。
ひび割れは「原因の特定」より「放置しないこと」
まず目についたのが、北面を中心に複数箇所に入っていたひび割れです。縦に走っているものもあれば、横に伸びているものもありました。


外壁にひび割れが入る理由はひとつではありません。モルタルの乾燥収縮、前面道路を大型車が通ることによる振動の積み重ね、地震の揺れ。ただ正直に申し上げると、入ってしまったひび割れを見て「これは振動が原因です」と言い当てることは、まずできません。私たちにできるのは、原因がどれであっても共通して必要な処置、つまり「隙間を埋めて、水が入らない状態に戻すこと」を確実にやることです。
放置すれば、そこから雨水と湿気が壁の内部に入ります。中の下地まで水が届くようになると、塗装で解決できる話ではなくなっていきます。築18年という年数は、まだ十分に手前で止められる段階です。
黒い雨染みは、なぜ洗っても落ちないのか
もうひとつ目立っていたのが、黒い雨染み汚れでした。

リシン吹き付けの外壁は表面がざらざらと凹凸しており、汚れが引っかかって溜まりやすい性質を持っています。雨水が流れる筋に沿って大気中のちりが凹凸の谷にたまり、何年もかけて黒い縞になっていく。ここまで進むと汚れが凹凸の内側まで入り込んでいるため、洗浄で落ちるのは表層だけです。この状態をきれいにする方法は、実質的に塗り替えしかありません。そして「洗っても落ちない」段階になっていること自体が、塗膜の撥水性がかなり落ちているというサインでもあります。
お客様が一番気にされていたのは「補修の痕」でした
現地調査の結果をお伝えしたとき、お客様が真っ先に確認されたのは、費用でも塗料の種類でもなく「補修した跡は残りますか」ということでした。
これは、とても的を射た心配です。リシン吹き付けの外壁は表面に模様があるので、ひび割れを埋めた箇所だけがつるっと平らになります。そのまま塗ると、色は揃っているのに模様だけが違う帯が残り、光の当たり方によってはっきり浮いて見える。補修の位置が地図のように分かってしまうのです。
ですのでご提案は「ひび割れを埋める」で終わりではなく、「埋めた箇所の模様を周囲に戻す」ところまでを含めた形にしました。塗料の話は、この段取りを決めたあとに出てきます。
ラジカルって、そもそも何のことですか?

ここからが本題です。冒頭のご質問への答えを、順番に組み立てていきます。
ラジカルは塗料の名前ではなく、塗膜を壊す側の名前
最初にいちばん大事なことを書きます。ラジカルとは、塗料の種類の名前ではありません。塗膜を内側から壊していく、劣化因子の名前です。
塗装業界で言うラジカルは、化学でいうフリーラジカルのことで、非常に反応性が高い状態の物質を指します。まわりのものと手当たり次第に結びついて変化させてしまうため、塗膜の中でこれが発生すると、樹脂の分子が切られていきます。
つまり名前の向きが逆なのです。「ラジカル塗料」と聞くと強い塗料のように響きますが、ラジカルは敵の名前。ラジカル制御型塗料とは「その敵を抑え込む仕組みを持った塗料」という意味になります。
白い塗料に必ず入っている酸化チタンが、引き金を引いている
では、そのラジカルはどこから湧いてくるのか。発生源としてメーカー各社が説明しているのが、塗料の中に入っている酸化チタンです。
酸化チタンは白色顔料です。白い塗料はもちろん、淡いベージュもグレーもクリームも、明るい色をつくるにはこの顔料が欠かせません。住宅用の塗料にはほぼ必ず入っていると言っていい材料です。
ところが、この酸化チタンには光触媒としての性質があります。紫外線が当たると、まわりの水分や酸素と反応して活性の高い物質を生み出す。これがラジカルです。そしてそのラジカルが、酸化チタンのすぐ隣にある樹脂を分解しはじめます。
樹脂が分解されていくと、樹脂に抱えられていた顔料が表面で保持できなくなり、粉状になって外に出てきます。これがチョーキング(白亜化)です。壁を手でこすると白い粉がつく、あの現象の正体は、樹脂が紫外線とラジカルによって分解され、顔料がむき出しになった状態だと説明されています。色を出すために必要な材料が劣化の引き金にもなっている。ここに手を入れようというのが、ラジカル制御型塗料の発想です。
ラジカル制御型塗料は、塗膜の中で何をしているのか
メーカーが公表している内容をまとめると、ラジカル制御型塗料の仕組みは、大きく二段構えで説明されています。
一段目は、ラジカルを発生させにくくすることです。 顔料として使う酸化チタンの粒の表面を、シリカやアルミナといった無機の膜で覆っておく。こうすると紫外線が当たっても、酸化チタンの表面で起きる反応が樹脂に直接届きにくくなり、ラジカルの発生そのものが抑えられるとされています。粒ひとつひとつにカバーをかけている、とイメージしてください。
二段目は、発生してしまったラジカルを捕まえることです。 塗膜の中にラジカル補足剤(光安定剤)を配合しておき、発生したラジカルと先に反応させて無害な状態にしてしまう。ラジカルによる樹脂の分解は連鎖的に進むと言われているので、その連鎖のどこかで止めてしまう、という考え方です。
覆って発生を減らし、こぼれたものは捕まえる。この二段構えによって、同じ樹脂を使っていても塗膜が長持ちすることが期待できる、というのがラジカル制御型塗料の説明です。国内では2010年代前半に大手メーカーが市場に出し、そこから普及したとされています。

今回の外壁の主剤に使ったのが、写真の缶にあるアステックペイントのスーパーラジカルシリコンGHです。缶に「ラジカル革命」と大きく書かれているとおり、この製品もラジカル制御を売りにしたシリーズのひとつです。
ラジカルとシリコンは、比べる軸が違います

「ラジカル=グレードの名前」という誤解を、まず外してください
外壁塗装の記事を読んでいると、こんな並びをよく見かけます。
アクリル < ウレタン < シリコン < ラジカル < フッ素 < 無機
この並べ方はわかりやすいのですが、正確ではありません。アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素・無機は、塗膜を形づくっている樹脂が何なのかによる分類です。材料そのものの区分ですから、この五つは一本の線の上に並べられます。
ところがラジカル制御は、樹脂の名前ではありません。その塗料が、紫外線による劣化の連鎖をどう抑えているかという技術・処方の話です。材料の分類と、劣化を抑える工夫。この二つはまったく別の軸なので、一本の線に混ぜるのではなく、こう捉えるのが実態に近くなります。
軸1(樹脂の種類) アクリル / ウレタン / シリコン / フッ素 / 無機
軸2(劣化を抑える技術) ラジカル制御あり / なし
そして市場で「ラジカル塗料」と呼ばれているものの多くは、この二つの軸が交わったところ、つまりシリコン系の樹脂にラジカル制御の技術を組み合わせた塗料です。今回使ったスーパーラジカルシリコンGHという製品名が、まさにそれを表しています。
ですから、冒頭のご質問「ラジカルはシリコンより上ですか、下ですか」への答えは、こうなります。上でも下でもなく、多くの場合は、その両方です。
では、従来のシリコンとは何がどう違うのか
樹脂は同じ系統です。 ラジカル制御型シリコンも、樹脂そのものはシリコン系。ですから塗膜のかたさ、汚れの付きにくさ、質感といった基本的な性格は、従来のシリコン塗料と大きく変わりません。
違うのは、劣化の入口に手が入っているかどうかです。 従来のシリコンは、紫外線が酸化チタンに当たってラジカルが発生する部分について、とくに対策をしていません。だから紫外線を浴び続ければ、樹脂が順当に分解され、チョーキングが出て、光沢が落ちていきます。ラジカル制御型は、酸化チタンを覆って発生を減らし、出たものを補足剤で捕まえる。同じシリコンでも、この入口の部分で差がつくよう設計されている、という違いです。
結果として、変化が出はじめるまでの時間に差が出ることが期待されます。 ただ「何年延びます」という言い方は、条件を無視した話になるのでしません。メーカーが示す耐候性の数字も、後述のとおり促進試験に基づく目安です。劣化の起点に対策を入れているぶん、同じ条件に置けば従来型より変化が遅く出ることが期待できる。技術としての説明は、そこまでです。
チョーキングが出にくいと言われるのは、なぜか
チョーキングは「汚れ」ではなく、樹脂が分解されて顔料がむき出しになった状態です。そしてその分解を引き起こしている主役がラジカルです。つまり、ラジカルの発生を抑え、発生したものを捕まえる技術は、チョーキングという現象の原因そのものに手を入れていることになります。だから「チョーキングが出にくい」という言い方をされるわけです。
ただ、これも「出ない」ではありません。時間が経てば、どんな塗膜にもいずれ変化は出ます。また日射条件が厳しい南面や西面と、日の当たらない北面とでは、同じ家でも進み方が違います。ラジカル制御は寿命を無限に延ばす装置ではなく、劣化のカーブを寝かせる技術だと理解していただくのが、いちばん実態に近いと思います。
価格差は、どれくらいになるのか
費用の話に触れておきます。業界で一般的に言われている目安としては、ラジカル制御型のシリコンは、従来型のシリコンより少し上、フッ素よりは下、という位置づけに収まることが多いとされています。シリコンとフッ素の中間で、どちらかといえばシリコン寄り、という説明がよく使われます。
これらは業界で一般的に言われている目安であり、当社の見積金額を示すものではありません。実際の金額は現地調査のうえでお見積りいたします。
そのうえで正直に申し上げたいことがあります。外壁塗装の総額では、塗料のグレード差より下地補修の差のほうが大きく効く場面が珍しくありません。 ひび割れが何本あるか、どれくらい深いか、模様の吹き戻しが必要か。これで職人が現場にいる日数が変わります。このお家の工期21日間も、塗る作業そのものより下ごしらえにかなりの日数を使っています。
それでもラジカル制御は、万能ではありません

ここまで技術の中身を説明してきましたが、良いところだけを並べて終わるつもりはありません。
下地が悪ければ、塗料の性能は出ません
これがいちばん大事な但し書きです。塗料の性能は、塗膜が下地にきちんと密着し、規定の厚みで、規定の乾燥時間を守って重ねられて、はじめて発揮されます。汚れが残った下地に塗れば塗膜は汚れの上に載り、ひび割れを埋めずに塗れば下から動きが伝わって切れます。こうした状態では、ラジカル制御であろうとフッ素であろうと、カタログの性能にはなりません。
言い換えると、高い塗料は下地の粗さを埋め合わせてくれないということです。よい塗料を選ぶ意味があるのは、下地の処理が正しく行われることが前提になっている場合だけです。
耐用年数は「試験に基づく目安」であって、保証ではありません
塗料のカタログに載っている耐用年数は、多くの場合、促進耐候性試験の結果から換算された目安です。キセノンランプなどで紫外線や水分、温度変化を人工的に、屋外よりずっと厳しいペースで当て続け、塗膜がどこまで持ちこたえたかを実際の年数に読み替えたものになります。
試験は条件を揃えるためのものですから、実際のお家とは違います。方位、日照時間、隣家の影、雨がかりの多さ、そして下地の状態と施工の丁寧さ。これらが変われば結果も変わり、同じ塗料を同じ日に塗った壁でも、南西の面と北の面では差が出ます。ですから数字は「この塗料はどのくらいの耐候性の階層にあるか」を知るための目安として使い、実際の塗り替え時期は年数ではなくお家に出ているサインで判断していただくのがいいと思います。
ラジカル制御が向く家、別の選択のほうがいい家
向いていると思うのは、明るい色や淡い色で仕上げたいお家です。ラジカル制御は白色顔料である酸化チタンを起点にした劣化への対策なので、その顔料を多く使う色ほど技術の狙いどころと合っています。フッ素や無機まで予算を伸ばすのは難しいけれど、従来のシリコンのサイクルは少し短く感じる、という方にとって、ちょうど間を埋める位置にあります。
あまり意味が大きくならないのは、まず下地の傷みが深く、塗装で対応できる範囲を超えかけているお家です。この場合は塗料の等級より、補修を含めた全体の設計を先に決めるべきです。次に、極端に濃い色で仕上げる場合。技術の狙いが白色顔料側にあるので効きどころが変わります。さらに、あと数年で建て替えの予定があるお家では、耐候性を伸ばすことにお金をかける意味が薄くなります。
ラジカル制御は「誰にでもおすすめの正解」ではなく、条件が合ったときに費用対効果が良くなる選択肢だ、というのが私たちの受け止め方です。
このお家で、スーパーラジカルシリコンGHを選んだ理由
実際の選定は、次の順番で考えました。
第一に、下地の状態でした。 ひび割れはありましたが、樹脂モルタルを刷り込んで埋められる範囲で、角の欠けもコテで作り直せる程度。下地補修で十分に手当てができる段階だったということです。ここが「塗装では追いつかない」状態であれば、塗料の話をする前に工事の組み立てを変えていました。
第二に、色の方向でした。 明るい色で仕上げるご希望でしたから、酸化チタンを多く含む塗料になります。ラジカル制御の狙いどころと重なる条件です。
第三に、費用と持ちのバランスでした。 以前に訪問販売で高額な見積もりを受けて工事を見送られた経緯があるお客様です。金額を抑えるためだけに中身の薄い工事をするのは、その経験に対して不誠実だと思いました。かといって最上位の塗料を勧めるのも違う。下地補修に必要な手間はきちんと確保したうえで、上塗りは持ちと価格の折り合いがつくところ、という考えでラジカル制御型のシリコンに落ち着きました。
全工程を写真で公開します

21日間の流れを、順番に追います。
1|ひび割れの補修(樹脂モルタルの刷り込み)
足場を組んだあと、最初に取りかかったのがひび割れの補修です。今回は隙間がそこまで大きくなかったため、刷毛を使って樹脂モルタルを刷り込む方法をとりました。表面をなでるだけでは中に空洞が残るので、刷毛の先で押し込むように奥まで入れます。


埋め終わった状態がこちらです。ひび割れそのものは、これで水の通り道ではなくなりました。ただ、見てのとおり補修した帯だけ表面が平らになっています。この模様の違いを消す工程が、あとで出てきます。なお、幅が大きく深いひび割れの場合は、溝を彫り直してから充填するUカットという方法をとることもあり、どの方法にするかは一本ごとの状態を見て決めています。
2|欠けた角を、コテで作り直す
外壁の出隅に、何かをぶつけたと思われる欠けがありました。欠けたまま塗ると影の出方が変わって痕が残るため、コテを当てて材料を盛りながら角のラインを作り直します。


角が復活しました。地味な作業ですが、まっすぐな線が戻るかどうかで完成の印象がかなり変わります。
3|高圧洗浄

下地補修が済んだら、高圧洗浄で外壁全体の汚れを洗い落とします。どれだけ良い塗料を使っても、下に汚れの層が挟まっていれば塗膜は汚れごと剥がれます。洗浄の目的は見た目を戻すことではなく、塗料が密着できる下地に整えることです。
4|パターン復旧(リシンの吹き戻し)
ここが、この工事でお客様がいちばん気にされていた部分です。

ひび割れを埋めた箇所は、周囲のリシン模様に対して平らになっています。そこにエアレスでリシンを吹き付け、周囲と同じざらつきを作り直します。吹き付ける量が多すぎればその部分だけ模様が粗く盛り上がり、少なすぎれば平らなまま。周囲の粒の大きさを見ながら距離と圧を調整します。

吹き戻しが終わった状態です。吹いた塗料が白いので色の差は目立ちますが、模様そのものは周囲になじみました。色は上から塗るので、この段階で模様さえ揃っていれば仕上がりで補修箇所は分からなくなります。
5|鉄部のケレンと錆止め
外壁の下塗りに入る前に、庇・シャッターボックス・水切りといった鉄部の下ごしらえを進めます。まずケレンで表面の錆や古い塗膜の浮きを落とし、細かい傷をつけて塗料が食いつく状態に。ここを飛ばすと、いくら錆止めを塗っても数年で下から錆が浮いてきます。


錆止めには日本ペイントの1液ハイポンファインデクロを使いました。錆の発生を抑えるだけでなく、しっかりした膜をつくることで上塗りの仕上がりも整います。今回は上から白系の塗料を重ねる箇所だったため、白い錆止めを選んでいます。

6|外壁の下塗り(フィラー)
外壁は3回塗りで仕上げます。1回目の下塗りに使ったのが、アステックペイントのホワイトフィラーAIIです。フィラーとは、下地の細かなひび割れを埋めながら、上に塗る主剤がのりやすい面を作る下塗り材。モルタル外壁ではこの工程がとくに重要です。


下地が凹凸しているため、ローラーを押しつけるように力を入れて谷まで材料を送り込みます。フィラーは白いので、塗り終わるとお家全体が一度真っ白に。ひび割れの補修跡も、角の補修跡も、吹き戻しの跡も、すべて同じ白の下に隠れました。
7|中塗り・上塗り(ラジカル制御型シリコン)
そして、この記事の主役である主剤の出番です。アステックペイントのスーパーラジカルシリコンGHを、中塗り・上塗りの2回に分けて重ねます。

中塗りから色が付きます。白かった壁に色が乗っていくので、この日がいちばん見た目の変化が大きい日です。

中塗りをしっかり乾燥させてから、同じ塗料・同じ色で上塗りをします。「同じものを2回塗るなら1回でいいのでは」と聞かれることがありますが、1回で厚く塗ると垂れやムラが出て、かえって膜が均一になりません。2回に分けることで、必要な厚みを平らな状態で確保できます。
塗料の性能が発揮されるかどうかは、この膜の厚みと均一さにかかっています。ラジカル制御は塗膜の中で働く技術ですから、その塗膜が薄かったりムラだらけだったりすれば、そもそも技術が働く場所がありません。塗料を選ぶことと、その塗料を規定どおりに塗ることは、セットではじめて意味を持ちます。

8|付帯部の塗装
付帯部とは、外壁以外で塗装できる箇所の総称です。雨樋、シャッターボックス、水切り、庇などが含まれ、こちらは2回塗りで仕上げました。鉄部も樹脂部も紫外線と雨で傷んでいきますから、塗膜で覆っておくこと自体が保護になります。最後に細かなタッチアップと清掃をして、工事は完了です。
大東市緑ヶ丘で、モルタル外壁を塗るということ
大東市は大阪府の東部、生駒山地の西のふもとに広がる街です。緑ヶ丘のあたりは整備された住宅地で、同じような年代・同じようなつくりのお家が並んでいます。今回のお家も、モルタル下地にリシン吹き付けという、その年代の標準的な仕様でした。似た築年数の家が並んでいるということは、劣化の出方も似てくるということです。実際この工事も、当社が近くで足場を組んでいたところにお声掛けをいただいたのがきっかけでした。
大東市は住宅地と幹線道路、そして事業所が近い距離にあります。交通量の多い立地では、振動がひび割れの一因になっている可能性は否定できません。ただ前述のとおり、入ってしまったひび割れから原因を言い当てることはできません。ですので「原因はこれです」と断定する代わりに、どの原因であっても効く処置を確実にやるという考え方をとっています。
そして、リシン吹き付けの家が並ぶ地域だからこそ、吹き戻しができるかどうかは大きな差になります。模様のある外壁で補修跡を消すには模様そのものを作る作業が必要で、それは塗料のカタログには載っていない部分です。
完工の日|「ラジカルって何ですか」の答え合わせ

足場を解体した日、お客様と一緒に外壁を一周しました。最初にご案内したのは、いちばん気にされていた、ひび割れを補修した箇所です。
「どこでしたっけ」と言われました。それが、いちばん聞きたかった言葉でした。埋めて、角を作り直して、模様を吹き戻して、フィラーで整えて、2回塗り重ねる。その積み重ねの結果として、補修の位置が分からなくなっていたということです。
そのあと、最初のご質問に戻りました。ラジカルは塗料の名前ではなく、紫外線が塗料の中の酸化チタンに当たったときに生まれる、塗膜を内側から壊していく因子の名前です。ラジカル制御型塗料は、その発生を減らし、出てきたものを捕まえて、樹脂が分解される連鎖を遅らせようとしています。今回使ったのはシリコン系の樹脂にその技術を組み合わせた塗料なので、シリコンより上でも下でもなく、シリコンでもありラジカル制御でもある。それが答えです。
そして同じくらい大事なこととして、こうもお伝えしました。この技術は劣化を止めるものではなく、遅らせるもの。塗料がその力を出せるかどうかは、下地の処理と、規定どおりに膜を作れているかで決まります。塗料の名前は見積書に残りますが、実際にお家を守っているのは、その名前の下に積み重なった工程のほうです。
「なんだ、じゃあ結局、誰が塗るかってことですね」とお客様が笑われました。ええ、その通りです、とお答えしました。
よくあるご質問
ラジカル制御型塗料は、シリコン塗料とは別のグレードなのですか?
別のグレードではありません。アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素・無機というのは、塗料を固めている樹脂の種類による分類です。一方でラジカル制御は、紫外線による劣化の連鎖をどう抑えるかという技術の名前で、分類の軸がそもそも違います。ですから「ラジカル塗料」という独立したグレードがあるのではなく、実際には「ラジカル制御を組み込んだシリコン塗料」という形で世に出ているものが多くなります。見積書に「ラジカル」とだけ書いてあったら、その下の樹脂が何なのかを必ず確認してください。
ラジカル制御型にすれば、チョーキングは起こらなくなりますか?
起こらなくなる、とは言えません。ラジカル制御は、塗膜の中で発生する劣化因子を減らし、発生したものを捕まえて連鎖を止めることで、チョーキングが表に出るまでの時間を延ばす技術だと各メーカーは説明しています。進行を遅らせる方向の話であって、劣化そのものを止める技術ではありません。加えて、規定より薄く塗られていたり乾燥時間を守らずに重ねられていれば、どんな塗料でも本来の性能は出ません。「ラジカル制御だから粉が吹かない」ではなく「同じ条件なら、粉が吹き始めるまでの時間が延びることが期待できる」という理解が実態に近いです。
ラジカル制御型のシリコンは、普通のシリコンよりどれくらい高くなりますか?
業界で一般的に言われている目安としては、従来型のシリコンとフッ素の中間、ただしどちらかといえばシリコン寄りの価格帯に収まることが多いとされています。ただしこれは業界で一般的に言われている目安であり、当社の見積金額を示すものではありません。実際の金額は、塗る面積、足場の組みやすさ、下地補修にかかる手間で大きく動きます。とくにモルタル外壁は、塗料の単価差より下地補修の差のほうが総額に効いてくることが珍しくありません。
モルタル外壁にラジカル制御型塗料を使うとき、気をつけることはありますか?
上塗りの性能より先に、下塗りと補修の設計を考えることです。モルタルは動く下地で、乾燥収縮や振動でひび割れが入ります。上に載せる塗料がどれだけ高性能でも、下からひび割れが伸びてくれば塗膜も一緒に切れます。ですからひび割れを樹脂モルタルなどで先に埋めたうえで、細かいひび割れを埋めながら下地を整えるフィラー系の下塗り材を挟むのが基本です。
カタログに書いてある耐用年数は、そのまま信じていいのでしょうか?
そのままの年数がどの家でも出る、という読み方はしないでください。塗料メーカーが公表している年数の多くは、促進耐候性試験と呼ばれる、紫外線や水分を人工的に当て続ける試験の結果から換算した目安です。実際の屋外では、方位、日照時間、周囲の建物の影、そして何より下地の状態と施工の丁寧さで結果が変わり、同じ塗料を同じ日に塗った家でも南西面と北面では差が出ます。数字は耐候性の階層を知る目安として使い、実際の塗り替え時期は年数ではなくお家に出ているサインで判断されることをおすすめします。
塗料の名前で迷っている段階でも、ご相談ください
見積書に並んだ塗料の名前を前にして、どれが自分の家に合っているのか分からない。その状態でご相談いただくのが、いちばん良いタイミングだと思っています。
私たちがまずお伝えするのは、塗料のおすすめではなく、いまお家がどういう状態にあるかです。下地がどうなっていて、どこまで補修が必要で、そのうえで塗料をどの階層から選ぶと釣り合うのか。この順番でしかご提案はできません。
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