堺市東区|築20年の意匠サイディングを3回塗りで塗装|下塗り・中塗り・上塗りの役割


「他社さんより高いのは、何が違うんですか」
堺市東区のお客様から最初にいただいた質問は、これでした。テーブルの上には見積書が三枚。金額はいちばん安いものといちばん高いもので、四十万円ほど開いていました。塗る面積はどれもほぼ同じ。使う塗料のグレードも似たようなことが書いてある。それなのに、なぜこれだけ違うのか。ご本人にとっては、まったく納得のいかない差だったはずです。
お手元の見積書を拝見して、私はまず一枚目の「外壁塗装 一式」という行を指しました。そして三枚目の、同じ場所にある「外壁塗装(下塗り・中塗り・上塗り 計3回)」という行を指しました。
「たぶん、差はここです」
この記事は、そのあと実際に行った18日間の工事の記録です。築20年、1階は積み石調・2階は吹付調という凹凸の深い意匠サイディング。ボードはすでに反りはじめ、目地のシーリングは弾力を失っていました。外壁は下塗り・中塗り・上塗りの3回塗り、目地は全打ち替え。同等の内容を現在の価格でお見積りすると123万円前後(税込)になります。
なぜ3回塗るのか。3回のうち、どこがいちばん大事なのか。そして——3回塗ったことを、お客様はどうやって確かめればいいのか。この現場の工程写真16枚で、ひとつずつ説明していきます。
工事データ
| 施工エリア | 大阪府堺市東区 |
|---|---|
| 築年数 | 20年 |
| 外壁材 | 窯業系サイディング(1階=積み石調/2階=吹付調の意匠面) |
| 施工内容 | 外壁塗装(下塗り・中塗り・上塗りの3回塗り)/シーリング打ち替え/付帯部塗装/塀の塗装 |
| 使用材料 | 下塗り:水性シリコン浸透シーラー(日本ペイント)/中塗り・上塗り:KFシェアルドF(KFケミカル・1液水性フッ素) |
| 工事期間 | 18日間 |
| 保証年数 | 外壁10年 |
| 参考価格 | 123万円前後(税込) |
※参考価格は、同等の内容を現在の価格でお見積りした場合の目安です。建物の大きさ・劣化の程度・足場のかかり方によって変わります。
なぜ外壁は3回塗るの?
外壁塗装の見積書には、たいてい「3回塗り」と書いてあります。ところが、なぜ3回なのかを説明されることは、あまり多くありません。「決まりだから」「そういうものだから」で終わってしまう。
結論から言うと、3回塗るのは、同じ作業を3回繰り返しているからではありません。役割の違う3つの作業を、順番にやっているからです。
ここを取り違えると、「じゃあ2回でもだいたい同じでしょう」という発想になってしまいます。同じにはなりません。3回のうち1回を抜くというのは、3分の1を減らすことではなく、三つの機能のうちの一つを丸ごと失うことだからです。
下塗り・中塗り・上塗りは、それぞれ何をしている?

ざっくり分けると、こうなります。
| 1回目:下塗り | 下地と塗料を密着させる。接着剤の役割。多くは無色または白。ここでは色も艶もつくらない。 |
|---|---|
| 2回目:中塗り | 色をつくり、膜の厚みをつくる。仕上げ色の1層目。ここで下地の色を消していく。 |
| 3回目:上塗り | 仕上げと耐候性。塗り残し・かすれを消し、規定の膜厚を確保して、艶と耐候性能を出す。 |
塗料メーカーが「10年もちます」「15年もちます」と言うとき、その数字は規定どおりの回数と量で塗った膜を前提にしています。膜が薄ければ、その塗料が本来持っている性能は出ません。紫外線や雨から家を守っているのは塗料の名前ではなく、壁の上にできた塗膜の厚みです。
「3回塗り」は誰が決めているの?
塗装業界が慣習で決めたルールのように思われがちですが、そうではありません。塗料をつくったメーカー自身が、商品ごとに決めています。
塗料には必ず「製品カタログ」と「施工要領書」がついていて、そこに、どの下塗り材と組み合わせるか、1平方メートルあたり何グラム塗るか、次の工程まで何時間空けるか、何回塗り重ねるかが書かれています。今回使ったフッ素塗料であれば、下塗り1回+上塗り2回。これが標準の仕様です。
そして、この仕様どおりに塗ったときの性能が、カタログに載っている耐用年数の根拠になっています。仕様を外して塗った塗膜は、もうその商品ではない、と言ってもいいくらいです。だから私たちは、現場で「だいたいこれくらい」と決めるのではなく、その塗料の要領書に合わせて動きます。使う塗料が変われば、下塗り材も、待ち時間も変わるからです。
ちなみに、住宅ではなく公共の建物の塗り替えでも、工事の標準仕様書には下塗り・中塗り・上塗りの3工程が書かれています。3回塗りは、特別に丁寧な工事ではなく、「そこから始まる」基準線だとお考えください。
下塗りは何をしているの?なぜ「いちばん重要」なのか
3回のうち、どれがいちばん大事かと聞かれたら、私は迷わず下塗りと答えます。仕上がりの見た目にはまったく貢献しないのに、です。
理由は単純で、下塗りを間違えると、その上に何を塗っても剥がれるからです。どんなに高い塗料を上に重ねても、土台がくっついていなければ意味がありません。数年後に、塗膜がぺろりと帯状にめくれてくる。ああいう剥がれの多くは、上塗り材のせいではなく、下塗りの選定を外していることが原因です。
下塗り材は「素材」と「劣化状態」で変わる

下塗り材は一種類ではありません。ざっくり言うと、次の二つの軸で決まります。
- 何の壁か(素材)……窯業系サイディング、モルタル、ALC、金属。それぞれ表面の性質が違うので、密着させる方法が変わります。鉄部であれば下塗りは錆止めになりますし、金属サイディングなら金属用のプライマーを使います。
- どこまで傷んでいるか(劣化状態)……同じサイディングでも、表面がしっかりしているのか、指で撫でると粉が付くほど塗膜がやせているのかで、選ぶものが変わります。傷んで塗料を吸い込む壁には、染み込ませて固めるタイプ。表面が締まっている壁には、密着に振ったタイプ。
この現場では、水性シリコン浸透シーラー(日本ペイント)を使いました。名前のとおり、下地に浸透して古くなった塗膜の層を内側から固め、その上に塗る塗料としっかり手をつなぐタイプの下塗り材です。築20年、表面の塗膜が劣化して吸い込みが出ている窯業系サイディングには、この考え方が合います。
なお、外壁材のなかには光触媒や無機系のコーティングが工場で施され、通常の下塗りでは密着しない「難付着サイディング」と呼ばれるものがあります。この場合は専用の下塗り材が必要で、見分け方も別物です。詳しい見分け方と下塗り材の選び方は、難付着サイディングを扱った別記事で解説しています。


下塗りの写真を見ても、たぶん「何も変わっていない」ように見えると思います。それで正解です。下塗りは、変わらないことが仕事なのです。
中塗りと上塗りは何が違う?同じ塗料をなぜ2回塗るのか
ここが、いちばん誤解されているところです。
中塗りと上塗りは、同じ塗料を使うことがほとんどです。この現場でも、中塗りと上塗りはどちらもKFシェアルドFという1液水性のフッ素塗料。缶も同じ、色も同じです。
「同じものを2回塗るなら、1回にまとめて厚く塗ればいいのでは」——そう思われるのは自然だと思います。でも、それはできません。理由は二つあります。
理由1:1回では、規定の膜厚が出ない
塗料には「1平方メートルあたり何グラム塗ってください」という規定塗布量が決められています。これを1回で塗ろうとすると、塗料は自重で垂れます。壁に涙のような筋(ダレ)ができるし、垂れた分だけ膜は薄くなる。表面だけ先に乾いて内部が乾かず、あとから縮んで割れることもあります。
薄く塗って、乾かして、また薄く塗る。これが、垂れずに厚みを積む唯一の方法です。塗膜の厚みは、上に重ねた回数ぶんしか積み上がりません。
理由2:1回では、必ず塗り残しが出る
もう一つは、もっと単純な話です。人の手でローラーを転がしている以上、1回目には必ずムラや薄い部分が残ります。特に凹凸の深い壁では、山の頂点にはよく乗るのに、谷の底が薄くなる。
上塗りは、その取りこぼしを潰す工程でもあります。中塗りで9割、上塗りで残りの1割を埋めて、ようやく壁全体が均一な厚みになる。だから2回目と3回目は、同じ作業の繰り返しではなく、「粗づけ」と「仕上げ」なのです。


この2枚、色はほとんど同じに見えると思います。実際、同じ色です。お客様の目で中塗りと上塗りを見分けるのは、まず無理です。この「見分けがつかない」という点が、あとで出てくる大きな問題につながります。

職人が塗り残しを見落とさない仕組みは、じつはこの「濡れ色」です。塗った直後の面は水分を含んで濃く見え、乾くにつれて色が締まっていく。同じ色を重ねていても、作業中の壁には濃淡の境目がはっきり見えます。写真でも、塗ったばかりの部分とそうでない部分の違いが分かるはずです。
中塗りと上塗りで、わざと色を変えることはある?
あります。中塗りの塗料に少しだけ違う色を混ぜて、上塗りとの区別がつくようにする、という方法です。塗り重ねの確認ができるので、丁寧なやり方の一つではあります。
ただ、住宅の外壁で常にこれをやるかというと、そうとは限りません。理由は二つあって、一つは色を変えると、上塗りで完全に隠れきらないリスクがあること。淡い色の仕上げで中塗りに濃い色を入れると、薄い部分から下の色が透けてしまいます。もう一つは、調色した塗料は同じものを後から作りにくいこと。手直しのときに困ります。
ですので、屋根の塗装のように色が濃くて隠ぺい力が高い場合には色を変えることがあり、外壁では同色のまま、代わりに工程写真で記録を残すという選び方をすることが多い。どちらが正解ということではなく、「何をもって3回塗ったと証明するか」の手段が違うだけです。もし色を変えている業者に当たったら、それはむしろ、確認手段を用意している会社だと考えていいと思います。
凹凸のある外壁は、塗料を多く使うって本当?

本当です。そして、これはこの現場のように意匠のはっきりした壁で塗装費が上がる理由でもあります。
見積書に書かれている外壁の面積は、たいてい「壁を平らな板とみなした面積」です。ところが実際の壁は、平らではありません。

この写真の壁を、山と谷のあるじゅうたんだと思ってください。上から見た面積は同じでも、実際に塗料が触れる表面積は、平らな壁よりずっと大きい。凹凸が深いほど、規定量を守って塗ろうとすれば塗料の使用量は増えます。1缶で塗れる面積が減る、ということです。
ここで起きやすいのが、こういうことです。缶の数を増やしたくないので、ローラーの塗料を絞る。山の部分にはきれいに色が乗って、遠目には仕上がって見える。でも谷の底が薄い。数年後、谷から先に色があせ、そこから水が入っていく。
意匠のある壁ほど、「塗った量」を守ることが効いてきます。この現場でも、凹凸の谷に塗料を押し込むように、ローラーを縦横に動かしています。手間も塗料も、平らな壁より確実にかかる工程です。
なお、この写真をよく見ると、目地(縦のライン)の幅が下のほうは狭く、上に行くほど広くなっています。これはサイディングボードが吸湿と乾燥をくり返して反ってきているサインです。この段階なら塗装で守れますが、割れてしまうとボードの張り替えになります。
「2回塗りで安く」はなぜ安いの?
冒頭の四十万円の差に戻ります。
相見積もりで極端に安い金額が出てきたとき、その安さには理由があります。塗料のグレードを落としている場合もありますし、足場や養生を簡略にしている場合もあります。そして工程そのものを減らしている場合もあります。
ここではっきりさせておきたいのは、安い見積りを出す会社が悪い、という話ではないということです。予算に合わせて仕様を落とすこと自体は、業者としてありうる提案です。問題は、何を落としたのかがお客様に伝わっていないまま契約になることです。
「3回塗りのつもりで頼んだのに、実は2回だった」——これがいちばん困る。同じ工事だと思って比べていた三枚の見積書が、じつは中身の違う三つの商品だった、ということになるからです。
だから、見積書で「塗り回数」を確認する
難しい知識はいりません。契約前に、見積書のこの一点だけ見てください。
- 外壁塗装の行が「一式」だけで終わっていないか。「外壁塗装 一式 ◯◯円」としか書かれていない見積書は、何回塗るのかが約束されていません。
- 下塗り・中塗り・上塗りが、それぞれ行として書かれているか。理想は3行に分かれていて、それぞれに㎡数と単価が入っている状態です。
- 下塗り材の商品名が書かれているか。「シーラー」とだけ書いてあるのと、メーカー名と商品名まで書いてあるのとでは、意味がまったく違います。下塗りの選定こそがいちばん大事だとお伝えしましたが、それが書面に残っているかどうかで、確認できる範囲が変わります。
そして、いちばん確実なのは口で聞くことです。「これは何回塗りですか」「下塗りは何を使いますか」。この二つの質問に、その場ですらすら答えられるかどうか。答えが濁るようなら、もう一社に話を聞いてみてください。
3回塗ったことを、お客様はどうやって確かめる?
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
すでに書いたとおり、中塗りと上塗りは同じ色です。工事が終わったあとの壁を見ても、それが2回塗りなのか3回塗りなのかは、お客様には絶対に分かりません。塗膜の厚みを測る機械もありますが、一般のお宅で使うものではありません。
つまり、3回塗りは「終わってからでは検証できない工事」なのです。だからこそ、途中の記録が意味を持ちます。
お願いすればいいのは、この一つだけです。
「下塗り・中塗り・上塗りの写真を、それぞれ撮って見せてください」
私たちの現場では、工程写真にその日の作業名と日付を書いた黒板を一緒に写すようにしています。この記事に載せた工程写真にも、「シーラー塗装」「主材 中塗り」「主材 上塗り」と、それぞれ黒板が写り込んでいるはずです。日付も入っています。

なぜここまでするか。足場とシートに囲まれた壁は、お客様から見えないからです。見えない場所で行う工事で、見えないものにお金を払っていただいている。だったら、見えるようにするしかない。写真は、そのためのものです。
これは特別なサービスではなく、多くのまじめな業者がやっていることです。だから、遠慮なく頼んでください。「写真を出してください」と言われて嫌がる会社は、その時点で選択肢から外していい、と私は思っています。
塗り回数だけで、良し悪しは決まらない

ここまで3回塗りの話を続けてきて、最後に正直なことを書きます。
3回塗ってあれば良い工事、というわけではありません。「3回塗り」は、良い工事であるための必要条件であって、十分条件ではないのです。同じくらい効いてくるものが、少なくとも二つあります。
一つ目:下地処理
塗る前に何をしたか、です。汚れやコケが残ったままの壁に3回塗っても、塗料は汚れの上に乗るだけで、下地とは手をつなぎません。数年で汚れごと剥がれます。

目地のシーリングも同じです。この現場では、既存のシーリング材が細かくひび割れて弾力を失っていたので、全面を打ち替えました。シーリングの打ち替えにも、じつは「下塗り」があります。プライマーです。目地の内側にプライマーを塗ってから新しい材料を充填する。塗装と考え方はまったく同じで、密着させる工程を先に置くのです。




二つ目:乾燥時間
もう一つが、塗った回数のあいだにどれだけ待ったかです。
下塗りが乾ききらないうちに中塗りを乗せると、下の層が溶けたり、上の層が縮んだりして、結局は一枚の弱い膜になります。3回塗っていても、間隔を詰めて1日で駆け抜けてしまえば、3層分の性能は出ません。「3回塗った」と「3層になっている」は別のことなのです。
塗料ごとに「次の工程まで何時間空けること」という指定があり、気温や湿度でも変わります。乾燥を待つ時間は、作業していないように見えても、工事の一部です。この現場が18日間かかっているのも、大半は待ち時間でした。

ちなみに、缶そのものを写真に残しておくのもおすすめです。商品名・色番号・ロット番号が写っていれば、「何を塗ったか」があとから確認できます。
付帯部の下塗りは、外壁とは別物
最後にもう一点だけ。雨樋、水切り、シャッターボックス、庇。こうした付帯部にも塗装をしますが、ここでも「下塗りは素材で変わる」という原則がそのまま出てきます。

鉄部の下塗りは錆止めです。名前のとおり、塗ったあとに錆が出てくるのを抑えるためのもの。外壁に使うシーラーとはまったく別の材料で、目的も違います。同じ家の中でも、壁にはシーラー、鉄部には錆止め、と使い分けている。「下塗り」というのは一つの商品名ではなく、素材ごとに違う役割の総称だと考えていただくと分かりやすいと思います。
付帯部は面積が小さいぶん、小さめのローラーと刷毛で塗り分けます。樋の裏側や、外壁との際のライン出しなど、見た目の割に手間のかかる工程です。
この現場の18日間
今回の工事を、順番に並べるとこうなります。
- 足場の設置・飛散防止シート
- シーリングの打ち替え……マスキング → 既存材の撤去 → プライマー → 充填 → ヘラ押さえ
- シーリングの乾燥待ち
- 高圧洗浄……外壁、玄関前タイル、塀まで。上から下へ
- 洗浄後の乾燥待ち
- 養生……窓、換気口、床、植栽
- 外壁1回目:下塗り(シーラー)
- 外壁2回目:中塗り(フッ素)……1階と2階で色を分けて
- 外壁3回目:上塗り(フッ素)
- 付帯部塗装……鉄部は錆止めから
- 塀の塗装
- 点検・手直し・足場解体
外壁を塗っているのは、このうちの3工程だけです。残りは、その3工程が意味を持つようにするための準備と、待ち時間でした。外壁塗装の値段は、塗料代よりも、この「準備と待ち時間」の量で決まる——お客様にお伝えしているのは、いつもこのことです。
よくあるご質問
4回塗りや5回塗りのほうが、3回塗りより良いのですか?
単純に回数が多いほど良い、ということではありません。塗料には「この塗料は下塗り1回・上塗り2回で使ってください」という仕様がメーカーごとに決められていて、その仕様どおりに塗ったときにカタログどおりの性能が出るように設計されています。仕様が3回の塗料を4回塗っても、性能が1.3倍になるわけではありません。ただし、下地の劣化が激しくて吸い込みが強い壁では下塗りを2回入れることがありますし、色が大きく変わる場合(濃色から淡色など)は中塗りを2回に分けることがあります。これは「回数を増やしたほうが良いから」ではなく、その壁で規定の状態にするために必要だからです。回数そのものではなく、理由が説明できるかどうかを見てください。
3回塗りだと、外壁の凹凸や模様は埋まってしまいませんか?
この現場のような積み石調・吹付調の意匠であれば、埋まりません。3回塗ってできる塗膜の厚みは、乾いた状態で0.1mm前後です。一方、意匠サイディングの凹凸は数ミリから1cm近くあります。桁が二つ違うので、模様が消えることはありません。実際、この現場の施工後の写真でも、壁の陰影はそのまま残っています。ただし、これは「色を塗り潰しても凹凸は残る」という話であって、元の色柄(多色の風合い)はなくなり、単色になります。色柄そのものを残したい場合は、透明の塗料で仕上げるクリヤー塗装という別の選択肢になり、これは壁の状態によって可否が分かれます。
雨が降ったら、その日の塗装はどうなりますか?
塗りません。塗ったあとに降られた場合も、状況によっては塗り直しになります。塗料は乾く過程で膜になっていくので、その途中で水がかかると、膜として固まりきらないまま表面が荒れたり、白っぽくなったりします。そうなった面は、そのまま次の工程に進まず、乾かしてから研いで塗り直すのが正しい対応です。雨の多い時期に工期が延びるのはこのためで、「延びた」のではなく「待った」と受け取っていただけると実際に近いです。無理に工程を詰めるほうが、あとで困ることになります。
1階と2階で色を分けると、塗る回数も倍になるのですか?
回数は変わりません。1階も2階も、それぞれ下塗り・中塗り・上塗りの3回です。変わるのは手間のほうで、色の境目をまっすぐ出すための養生とライン出し、そして缶を分けての段取りが増えます。この現場も1階と2階で色を分けていますが、工程としては同じ3回。色数が増えたぶん、塗料が余りにくいよう使う量の読みがシビアになる、という違いはあります。
工事が終わったあと、3回塗りだったかを後から確認する方法はありますか?
塗り終わった壁を外から見て判断する方法は、正直なところありません。膜厚計という機械で測れば厚みは分かりますが、一般のお宅で用意するものではありませんし、下地の状態によって数値もぶれます。ですので、確認は工事中にしかできないと考えてください。具体的には、①契約前に見積書で下塗り・中塗り・上塗りが行として分かれているかを見る、②工事中に各工程の写真をもらう、③完工時に工程写真をまとめた報告書を受け取る。この三つです。とくに②は、進行中に一度でも「今日は何の工程ですか」と聞いておくと、記録が残りやすくなります。
おわりに
足場のシートが外れた日、お客様はご自宅の前に立って、しばらく壁を眺めておられました。凹凸の陰影はそのままで、色だけが茶系からグレー系に変わっている。塀も塗り替えたので、門まわりの印象はずいぶん変わりました。
そして、工事中に撮りためた写真をお渡ししたとき、こう言われました。
「高い理由が、この写真で全部わかりました」
四十万円の差の正体は、魔法のような技術でも、特別な塗料でもありませんでした。下塗りを選ぶこと。3回に分けて塗ること。そのあいだ、待つこと。そして、それを写真に残すこと。書き出してしまえば、それだけです。
ただ、この「それだけ」は、終わってから確かめることができません。だから、これから見積りを取られる方には、最初のひと言だけ覚えておいていただきたいと思います。「これは何回塗りですか」「下塗りは何を使いますか」。この二つを聞くだけで、見えていなかった差が、見積書の上に浮かび上がってきます。
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お手元の見積書とお家の写真をLINEで送るだけ。塗り回数・下塗り材・工程がどう書かれているかを無料で読み解いて、正直にお伝えします。
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